
前回は、品質不良や納期遅れなどで混乱していた現場を、3Sやムダ取りを通じて「マイナス」から「プラスマイナスゼロ」に戻す段階についてお話ししました。言い換えれば、前回でカイゼンのスタート地点に立ったわけです。以前にもお伝えしたように、これでカイゼンができたように思う方もおられると思いますが、実はここからがカイゼンの本質であるということを今回はお話しします。
スタート地点の状態とは、整理・整頓が行き届き、品質も納期も守れるようになった段階です。しかし、この厳しい変化の時代においては、単に「問題がない」だけでは不十分です。外部からの急な注文や仕様変更など、さまざまな変動にもスムーズに対応できる体制が求められます。
整理・整頓をしたことで、一見スムーズに見える工場の流れですが、それでも再度私は「流れ」に目を向けます。この状態では在庫管理が整い、部品の欠品や滞留は解消されています。しかし、さらに上を目指すためには、部品供給や生産のタイミングをお客様の要求に合わせ、生産スピードを高める「同期生産」に取り組む必要があるからです。これにより、お金の流れが良くなり、納期短縮にもつながります。
ここで重要なのは、流れのカイゼンは個々の作業者や工程だけでは完結しないという点です。ものづくりに関わる全員が協力し、滞留や待ち時間を発生させないという意識を持つことが欠かせません。容易なテーマではありませんが、ここから始めることで全員が「全体最適」の流れを実感しながらカイゼンに取り組めるようになります。
最初のステップは、「工程内の流れ」を整えることです。組立工程であれば、製品が途中で停滞することが最小限で、一気に完成に至る流れをつくります。大量生産ならライン生産、多品種少量生産ならセル生産が有効です。プレス工程で複数工程がある場合は、段取り替え時間を短縮し、小ロット生産で停滞を減らすことが流れづくりにつながります。
次に「工程間の流れ」をつくるには、前工程と後工程が同じリズムで動くようにすることが大切です。前工程が遅れれば後工程は待たされ、逆に作りすぎれば仕掛品があふれてムダが増えます。このボトルネックを防ぐため、生産計画を見直し、必要なものを必要なときにだけ流す仕組みを導入します。かんばん方式や一定数量でのロット引き渡しは、その効果的な方法の一例です。
こうして工程内・工程間の流れが整えば、全体のリードタイムは短縮され、在庫も減少し、資金の回転が早まります。さらに、工程の状態が明確になることで、不具合や遅れの発生も早期に発見できるようになります。
流れのカイゼンは見た目には地味かもしれません。しかし、その地味な活動を通じてそれまでに見えていなかった問題点が見えるようになり、対策が取れるようになれば、これは正しいカイゼンだということになります。