脱力・カイゼントーク 第102回

購買部門に求められる資質(後編)

前回、購買部門に求められる仕事の重要性とその内容についてご説明しましたが、それでも「購買はモノを買うだけだから楽な仕事だ」と思っている人もいるようです。しかし、購買ほど多くの社内外の関係者と密接に連携しなければならない部署はありません。営業、生産、設計、経理、物流、さらには多くの取引先。これらすべてと日々やりとりを重ね、必要な情報を正確に捉えて的確に伝え、業務が滞ることなく回す力がなければ、調整をスムーズに進めることはできません。私の実感としても、決して楽な仕事ではありません。

そこで私は、購買部門をサッカーにおける「ボランチ」に例えています。ボランチは後方からボールを受け取り、前線にパスを出す中継地点にいます。そのため、前後左右のすべての選手と関わるポジションであり、全体を見渡してパスを回し、リズムをつくる中心的な役割を担っています。強いチームではボランチがずっと走りまわり運動量が最も多いというのが定説になっていると聞きました。購買もまた、直接製品をつくるわけではありませんが、情報とモノの流れを支える重要な役割を担い、動き回って生産を支えるポジションだと思います。

たとえば設計部門に対しては、調達可能な代替部品や供給リスクのある品目などの情報を伝えることで、設計変更の判断に貢献することができます。営業部門にとっても、購買のレスポンスが早ければ、「その部品は手に入るのか?」という不安が解消され、安心して顧客対応ができます。また工場に対しては、「この材料は明日到着予定です」と事前に伝えることで、生産部門は安心して段取りをすることができます。もし、「あの部品は来ているのだろうか?」といった心配や、「その部品は今どこにあるの?」といった質問が生産側から出てくるようでは、購買の機能が十分に果たされているとは言えません。

さらに購買は、会社の方針や予算とも密接に関わります。たとえば、コストダウン施策においては、単に価格を下げるだけでなく、代替材や仕入先変更の提案、発注タイミングの見直しなど、多角的な視点からの提案が求められます。これらは単なる調達ではなく、「経営に寄与する活動」と言えるでしょう。

そして、購買担当者には現場の声に耳を傾ける姿勢も求められます。製造現場が困っていること、欲しい情報、求められているスピード感。こうした現場の実感を知らずに判断をすると、的外れな調達になってしまうことがあります。現場に出向き、会話を重ねることは、紙やメールの情報だけでは得られない気づきを与えてくれます。

加えて購買には、「先を読む力」も必要です。いま発注するものだけでなく、その先の需要を見越して準備を進める思考がなければ、常に場当たり的な手配になってしまいます。生産や販売計画を理解し、「次に何が起こるか」を想像しながら仕事を進めることが、購買部門の信頼を高めることになります。

このように購買部門には、「情報を持っていること」「それを適切に伝えること」が極めて重要な役割として求められます。単にモノを調達するのではなく、関係者全体が円滑に動くためのパスを回し続ける存在です。前回、購買担当者に求められる資質は現場の動きや経営の意図を的確に読み取る「情報把握力」、関係者と信頼関係を築きながら調整を進める「コミュニケーション力」。それと先を読み、全体を見渡して判断する「全体最適の視点」、そして価格だけでなく、品質や対応力も含めて取引全体にわたる「交渉力」と申し上げましたが、それを支えるのは、日々の現場との信頼関係だと私は考えています。