脱力・カイゼントーク 第101回

購買部門に求められる資質(前編)

前回までは「工場長に求められる資質」と「品質管理者に求められる資質」についてお伝えしてきました。今週からは「購買部門に求められる資質」と題して、購買業務の進め方のカイゼンに役立つ内容を、2回に分けてお話しします。

工場における購買部門の役割は多岐にわたりますが、もっとも基本となるのは、生産や出荷に支障が出ないよう、必要な部品や材料を、必要なタイミングで確保することです。いくら現場の準備が整っていても、肝心の部品や材料が届かなければ製品は作れません。この「間に合わせる力」が購買業務の土台になります。

しかし一方で、繁忙期や大型の注文の際には間に合わないことを恐れるあまり、必要以上に早め、または多めに発注してしまうこともあり得ます。その結果、在庫が増えて倉庫スペースを圧迫し、管理の手間も増えます。さらに、支払った資金が部品や材料の形で滞留し、経営を圧迫する要因にもなります。特に、動きが鈍い製品や、設計変更の多い製品に使う部品や材料は、使われないまま陳腐化するリスクが高くなります。

実際、現場カイゼン活動を支援する過程で、倉庫の棚や片隅に「すぐには使われそうもない部品や材料」が置かれているのを見てきました。これらの背景には、遅れ発生の恐れからだけでなく、コスト削減のためにまとめ買いしたものの実際には使い切れなかった、販売予測に基づいて購入したが売上が予想を下回った、あるいは設計変更で使えなくなったといった様々なケースがありました。

生産計画に対して部品や材料の不足が発覚すれば、「大変だ、生産が遅れてしまう!」と慌てて手配されますが、反対に余ってしまった在庫については「そのうち使うだろう」と軽視されがちです。しかし、経営の視点から見れば、どちらも見過ごせない問題です。だからこそ、「切れない買い方」と「余らせない買い方」の両方を意識することが、購買担当者にとって極めて重要になります。

また、価格交渉も購買部門の大切な役割です。相見積もりを取ることはもちろん重要ですが、価格の安さだけを優先すると、品質や納期、対応力などに問題が出ることもあります。長期的に信頼できる取引先と関係を築くことが大切です。そのためには、継続的な対話や現場訪問を通じて、互いの考え方や事情を理解し合うことが欠かせません。

近年は諸物価の値上がりが続き、価格交渉の場面も増えています。原材料の供給逼迫やエネルギー価格、物流コストの上昇などによって、価格が変動するのは避けられません。だからこそ、自社がどの項目で、どのくらいの負担を受けているのかを客観的に示し、具体的な根拠をもって取引先に伝えることが大切です。たとえば、「鋼材の価格が1トンあたり〇円上昇したことで、貴社の製品製造にかかる月間コストが△円増加した」「電気代が昨年比で□%上昇し、操業コストに大きな影響を与えている」など、数字と具体的な影響範囲を明示すれば、相手も真剣に受け止めてくれます。単なる「値上がりだから」ではなく、「何が上がったのか」「どこに影響しているのか」「どのくらいの負担になっているのか」といった事実を丁寧に伝えることが、納得のある交渉、ひいては信頼関係の構築につながると思います。

購買は単に「モノを買う」だけの業務ではなく、現場の流れを支え、経営資源の効率的な活用に直結する、極めて重要な役割を担っています。在庫の過不足を見極め、社内外の情報をもとに判断し、必要に応じて交渉する。その一つひとつの業務において、購買担当者の知恵と判断力が問われます。だからこそ、購買部門に求められる資質は明確です。現場の動きや経営の意図を的確に読み取る「情報把握力」、関係者と信頼関係を築きながら調整を進める「コミュニケーション力」。それと先を読み、全体を見渡して判断する「全体最適の視点」、そして価格だけでなく、品質や対応力も含めて取引全体にわたる「交渉力」です。

これからの購買担当者には、モノ・情報・人をつなぎ、現場と経営の橋渡し役としての誇りを持ち、その資質を最大限に発揮して活躍していただきたいと願っています。