12月のご挨拶

12月になりました。

先日、ある会社の社長が「カイゼン活動を始めた頃の勢いがなくなってきている。どうもみんな飽きてきたようだ」と心配そうに話していました。私はこの「飽きる」という心理に対して自分自身も何度もチャレンジしてきた経験があるので、そのことについてお話ししたいと思います。

私は現場指導を続けるために毎日一万歩以上歩くことを心がけて継続しています。基礎体力の維持や心身を整えるなど私には欠かせないものです。雨や雪の日でも何かしらの方法で歩くことを続け、「飽きる」ではなくこれが体力や自信となっています。元プロ野球選手のイチロー選手は朝食にカレーを食べることが話題になっていたことがあります。同じ食事を摂ることで「力を発揮するのに一番良い脳の状態をつくる」と脳科学者もその効果を認めていました。実際には彼の場合は毎日ではなく4日に一度くらいのペースだったようですが、彼はアスリートとして活躍するためにルーティンに取り入れていたようです。

このように「飽きる」とは別の心理に変換することも一つの形であると思いますが、以前若い友人に聞いた「飽きる」という面白い話を思い出したので紹介します。日本発のプロゲーマー・梅原大吾さんという方をご存知の方はいらっしゃいますか?梅原さんは20年以上、ストリートファイターシリーズのゲーム競技で世界の第一線に立ち続けている人物ですが、こんな話をイベントでしていました。「どんなに好きなことでも、同じことを続けていれば必ず飽きる。しかし、それはゲームに飽きたのではなく、成長しない自分に飽きているんです」。人は対象そのものに飽きたと感じてしまうが、本当は「変化がない自分」に飽きているのだというのです。そして「成長を実感できていれば、飽きるということはない」と強調していました。

私はこの言葉を聞いたとき、「これはモノづくり現場のカイゼン活動の姿そのものだ」と思いました。現場でも、カイゼンを始めた頃は、みんな意欲的に5Sやムダ取りに取り組みます。ところが、時間が経つにつれて、少しずつ活気が薄れていくことがあります。カイゼン提案が減り、発表会も形だけになり、しまいには「どうせ変わらない」と言う人も出てくる。こうした状況を見ると「飽きてきたんだな」と片づけてしまいたくなりますが、本当に飽きたのではなく、成長や意義を感じられなくなっているということなのだと思います。

では、なぜ成長を感じられなくなるのでしょうか。理由はいくつかあります。活動が毎年「同じことの繰り返し」になり、新しい気づきが少なくなること。カイゼンした成果が見えないため、本人もチームも「前より良くなった」という手応えが持てないこと。そして、自分の工夫が現場に反映されず、上からの指示になってしまい、「自分の成長」と結びつかなくなり、だんだん他人事になってしまうことです。

だからこそ、カイゼン活動を「飽きない活動」にするためには、一人ひとりが「成長している」と感じられる仕組みをつくることが大切です。昨日より作業が少し楽になった、歩行距離が少し減った、部品が取りやすくなった、不良が一件でも減った――そんな小さな変化であっても、そのカイゼンの成果を写真や数字で見える化すれば、「自分たちは良くなっている」という実感が強まります。また発表会で自分の工夫が紹介され、仲間から認められたり、快適な作業現場ができれば、人はもう一歩前へ進みたくなると思います。さらに、新たな切り口を見つける勉強会を開いたり、他社の工場見学をしたりなどの企画は有効です。結局、カイゼンを続ける本質とは「成長を実感できる場をつくること」なのだと思います。

結局、人は成長を感じたときにいちばん前向きになり、力を発揮します。それはゲームでも、ビジネスでも、そしてモノづくりの現場でも同じです。だからこそ、私たちがつくっていくべき現場は、「成長が実感できる場」なのだと改めて感じています。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫