
9月になりました。
私たちはもちろん学生ではありませんので「夏休みももう終わりか」と落胆することはありませんが、それでもお盆休みやボーナスといった夏の楽しみが終わり、仕事が憂鬱になる時期でもあります。そんな時期だからこそ、「仕事の中に楽しさをどう取り入れるか」を戦略的に考えてみる価値があると思いました。
最近ニュースで目にしたのですが、アメリカで今「バナナボール」という野球が人気を集めているそうです。
https://www.youtube.com/shorts/A5sGZiPfync
ジョージア州サバンナ発の「バナナボール」は、従来の野球とは随分と違い、ルールもエンターテイメント性やスピード感重視で大胆に改造されています。全部で2時間という時間制限や、「四球でも全力で走ってさらなるベースを狙う猛ダッシュ」、ファンが観客席でファウルフライをキャッチすれば打った選手はアウト、一発逆転の「ショータイム」などなどです。選手と観客が球場に一体感と楽しさをもたらしています。まるでプロレスのような演出を加え、真剣勝負に「楽しさ」という要素を融合させています。結果として、野球という競技そのものを新しい市場価値へと変えているのです。
私はこれを、これからの企業経営における一つのヒントだと考えました。私たちは理屈や効率を重視し、正確に業務を進めることを大切にしてきました。それは欠かせない大前提ですが、ルールや制度、堅苦しさが過度になると、失敗を恐れたり、緊張から頭が固くなって、いいアイデアが生まれなくなることも十分にあります。そこで「楽しさ」という価値観を加えることで、組織の雰囲気は変わり、成果が一段と高まる可能性があります。
カイゼンの現場では品質や安全が求められるため、「遊び感覚」の導入は今すぐには難しいかもしれません。しかし、企画開発、営業活動(PR)や人材募集といった領域では、「楽しさ」が特定の企業やSNSを中心に大きな力になってきていると考えます。営業では、堅苦しい説明から脱却し、面白い動画でのプレゼンや体験やユーモアを加えたプレゼンが相手の記憶に残ります。採用活動においても、待遇や条件だけではなく「働くのが楽しそう」と感じてもらうことが応募者を惹きつける鍵になります。
実例として、広島県の自動車部品メーカーのデルタ工業が制作した採用動画があります。設計者と製造者が日常の思いを、ラップで掛け合いながら表現する映像で、動画はSNSで話題になり、テレビでも紹介されました。真剣な想いをユーモアとリズムで見せることで、会社の雰囲気や部門間の関係性が親しみやすく、印象深く伝わります。「理屈」ではなく、「見て楽しい」が共感を生んでいると思います。
このように、真剣な主張をユーモアで表現することで、社内の雰囲気や職場のリアルさが親しみやすく伝わり、他社にはない独自性をアピールすることに成功しました。もし同じ業界で2社が同時に採用広報を行った場合、より面白く、共感を呼ぶ企画を打ち出した会社の方が間違いなく効果を上げるでしょう。ここに「楽しさを戦略的に織り込む意味」があります。
つまり、真剣さと楽しさは対立するものではなく、むしろ両立させることで企業の個性が際立ち、差別化戦略につながるのです。多様性ある表現やユニークな取り組みは、他社には真似できない強みとなり、営業や採用といった対外的活動において強い武器となります。
バナナボールが示すように、楽しさを戦略に取り込むことで市場を揺り動かすことができます。9月という節目に、ぜひ経営の視点から「楽しさを活かした差別化戦略」を考えてみてはいかがでしょうか。
日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫