2月のご挨拶

レアメタルをめぐる世の中の動きが大きくなり、最近はニュースでも目にすることが増えてきました。

釣り好きの友人が「このままでは釣りも金持ちの道楽になってしまう」と嘆いていました。船で沖合に出て楽しむジギングでは、「ジグ」と呼ばれる金属製のルアーを使いますが、その多くが比重の高いタングステン製です。このタングステンもレアメタルであり、価格の高騰が続いているそうです。しかもジグは、海底の何かに引っかかってしまったり、魚に糸を切られてしまえば海の底に沈んでしまう消耗品です。それが近々一気に6割も値上げされ、数本で船代と同等になるかもしれないとのことでした。

趣味の世界でさえこうなのですから、工業の世界ではなおさらです。レアメタルは国際政治の交渉材料にもなっており、価格が上がるだけでなく、ある日突然、手に入らなくなる可能性もあります。図面があっても材料が確保できなければ、モノづくりは止まってしまいます。

こういうときに考えておきたいのが、設計と調達にも協力してもらい、そこにリスクがないかを前もってチェックしておくことです。自社の製品の中にレアメタルを使っているところはないか。どの部品に、どんな目的で使っているのか。その材料でなければ本当にいけないのか。まずはここをはっきりさせることが大切です。材料の存在だけではなく、その材料に求めている機能も考えるのです。

そうすると、代替材の可能性が見えてきます。強度なのか、耐摩耗性なのか、耐食性なのか。少し仕様を見直せば他の材料でも対応できるかもしれません。表面処理の方法を変える、加工方法で補うといったやり方もあります。過剰品質になっていないかを見直すことも立派な設計改善だと思います。

もう一つ有効なのが共通化です。製品ごとに専用の材料や部品が増えていくと、調達が途切れたときに一気に生産が止まってしまいます。材質や板厚、ねじやコネクタ、工具などをできるだけ共通化しておくと、代替もききやすくなりますし、在庫の持ち方も変わってきます。段取りも楽になり、現場の負担も減ります。

調達面でも、一社に依存していないか、同等品の評価をしてあるか、図面の書き方が代替を認める表現になっているか、といった点を確認しておきたいところです。「この材料でなければ不可」と決めてしまうと、自分で逃げ道をふさいでしまうことになります。こうしたことは、問題が起きてからでは間に合いません。品質保証やお客様の承認に時間がかかるものほど、早めに動いておくことが大切です。

材料が変われば加工条件も変わります。工具の寿命や切削条件、熱の出方、バリや外観の問題など、現場で試してみないと分からないことがたくさんあります。だからこそ、設計と現場が行き来できる会社は強いのだと思います。日頃の改善活動が、こういう場面で生きてきます。仕事を守るために何をしておくか。小さな点検が、大きな停止を防ぎます。

春はもうすぐです。年度末に向けて忙しい時期ですが、こういうときこそ自分たちの足元を見直しておきたいものです。今の仕事がどんな材料に支えられているのか、もしそれが止まったらどうするのか。転ばぬ先の杖という言葉がありますが、その杖は日々の改善の中でこそ用意できるのだと思います。

二月は、その準備をするのにちょうどよい月ではないでしょうか。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫