脱力・カイゼントーク 第129回

カイゼンと経営の関係を考える 17 付加価値のある商品(製品)をどう作るか

前回は、付加価値を高め、その価値を価格に反映させることが、これからの経営にとって重要であることを書きました。今回は、付加価値のある商品づくりという前回の付加価値とは違った付加価値についてお話しします。

付加価値の高い商品を生み出すと聞くと、独創性や創造性、新規性が必要だと考えられる方も多いと思います。確かに、新しい技術や画期的な商品は、大きな付加価値を生むことがあります。しかし、付加価値は必ずしも「新しいものを生み出すこと」だけから生まれるわけではありません。

例えば、1960年代後半の日産セドリックと日産グロリアは全く別の車種として開発されていました。それが1975年型(330型)からは、エンブレムこそ違うものの、外観や基本構造は共通の、見た目がほとんど変わらない車として販売されるようになりました。品種を減らし、一車種あたりの生産量を増やすことでコストを下げ品質を上げ、利益に貢献するという考え方でした。その結果、車種としての個性は弱まりましたが、2つの販売店の合計販売台数は確実に増えました。

この事例は、新しい価値を付け加えた話ではありません。設計や仕様を整理し、セドリックには格式や高級志向といったイメージで、グロリアにはスポーティーやラグジュアリー感のあるイメージで差別化し、基本部品は共通化することで、コストダウンや品質の安定、あるいは供給力の向上といった価値を生み出した例だと言えるでしょう。これもまた、付加価値の一つです。

以前にもこちらで書いたことのある内容になりますが、トヨタ自動車の最近の取り組みにも特別なものを作り出すという方法以外で、付加価値を見出した事例もあります。これまで自動車の品質は、「走る・止まる・曲がる・壊れない」という基本機能品質に、「速く走れる」といった魅力品質が重ね合わされ、一体のものとして商品化されてきました。日本車は、小型車であっても高速道路を余裕で走れる性能を備えることを、一つの品質と捉えてきたと言えます。

しかし、低価格の中国製自動車のラインナップを見ると、「必ずしもすべてのお客様がスピード性能を求めているわけではない」という視点での価格構成になっているという認識が加わりました。速く走ることを望まない人にとっては、それは魅力ではなく、過剰品質になり得るという考え方です。

そこで、必要な基本品質はしっかり確保しつつも、スピード性能といった魅力品質をあえて切り分け、求める人には用意し、求めない人には載せないという考えを導入するとのことです。その結果としてコストを抑え、価格を下げる。これは単なるコストダウンではありません。お客様の価値観に合わせて品質の中身を再定義し、顧客満足を高める取り組みだと思います。これも付加価値と言えるでしょう。

製造業の現場でも、同じことが起きています。「念のため」「昔からそうしているから」という理由で残っている仕様や工程が、実は一部のお客様にとっては価値を生まず、負担になっていることがあります。それらを見直し、本当に必要な品質に集中することで、ムダが減り、品質が安定し、納期が守られるようになります。こうした変化は、お客様にとって分かりやすい付加価値です。

生産性向上やコストダウンは、これまで内部努力として実行されることが多かったかもしれません。しかし、お客様の立場に立って品質や仕様を見直した結果としてのコストダウンは、付加価値を下げるどころか、むしろ高めることがあります。カイゼンとは、単に効率を上げる活動ではなく、価値の中身を問い直す活動なのだと思います。

付加価値は、現場で日々積み重ねられているカイゼンの中に、すでに数多く存在しています。それを見つけ、言葉にし、数字で示し、経営判断につなげていく。その積み重ねが、全く新しいものを作らなくても、評価される付加価値を生み出すことも可能だということです。