○○なカイゼン 第五話

第五話 あぶく銭では学べない

私がカイゼンコンサルタントになって30年以上が経ちました。その間、非常にたくさんの会社でたくさんの方々と出会ってコンサルティングの仕事をしてきました。自分勝手な思い込みかもしれませんが、そのうちの多くの仕事でお客様のお役に立てたと思っています。

しかしうまくいかなかった事例もあります。どういう場合にうまくいかなかったのかと考えると、もちろん私が力不足であったということなのですが、それ以外に共通していることは、依頼して下さったお客様が「問題を抱えていない」場合だったと思います。

今回はこれまでで一番うまくいかなかったコンサルティングの事例をご紹介することでカイゼンの進め方のご参考にして頂ければと思います。

「実はコンサルティングというものをやったことがないので、試してみたいのです。別にどういう問題があるわけでもありません。何をしたいということがはっきりしてるわけでもありません。ちょっと現場を見てアドバイスをくださいませんか。」

だいぶ以前のことですが、このようなちょっと変わったコンサルティングの依頼を受けました。これはカイゼンについての相談になっていません。依頼主は問題点を明確に絞っておらず、コンサルティングを通じて何をどう変えていきたいのかのビジョンがありません。私はカイゼンのコンサルタントですから、コストや品質といったモノづくりのことならアドバイスできるのですが、この内容でお役に立てるかどうか分かりませんでした。「それではお引き受けできません」と言ってお断りすべきであったのですが、その時は「はい分りました。それでは一緒に頑張りましょう!」みたいなノリで引き受けてしまいました。明らかに軽率な判断であったことは、コンサルティングを始めてすぐに分かったのですが…。

このような依頼の背景には国からのお金がありました。国や県の政策で助成金や支援金などのサービスでコンサルタントを雇うお金を支援するサービスがたまにありますが、この時はまさにそれでした。その方たちはどうコンサルタントを使うといったはっきりした考えはなかったのですが、それでも助成金を手に入れることができました。そこで何でもいいからコンサルタントを使ってみようということで私への依頼になったようです。

早速コンサルティングを始めましたが、初日から行き違いが起きました。現場を見て私が、こういう風にカイゼンしたらいいのではないですか、とアイデアを出すと、「それはちょっと忙しいので無理ですね」と即座に断わられることがありました。私としては始めたばかりなのでかなり手加減したつもりの提案であったので断られて驚きました。あるいは宿題にしたことに対して「分かりました」といいお返事を戴いたけれど、次回の訪問時までに何もやってなかったといったことも起きました。ちょっとした忙しさがあっただけで「忙しくできませんでした」と言われてしまい、その間何も変わらなかったことになってしまいました。数回伺いましたが、私が伺っていろいろな指摘をしてもとうとう何も起きず、ただ現場でおしゃべりするだけに終わってしまいました。

忙しいとカイゼンはやらなくていいのですか?
カイゼンで忙しさを解決しないで、いつカイゼンができるようになるのでしょうか?
お金をもらってしまったのでコンサルティングを受けることが大切になってしまい、カイゼン実行はオマケのようになっていませんか?
ナゼこうなるのか?というと「問題を抱えていない」からですね。これらは当時の私が持った感想です。

困っておられたり、探究心のある方にはいくらでもアドバイスすることができるのですが、コンサルティングに興味をもっているというだけでは、ありがたいですけれどもお力になれないことがあるのです。

この事例はたまたまであったかもしれませんが、せっかくの助成金があぶく銭になってしまいました。「あぶく銭では学べない!」ご参考にしていただければ幸いです。