カイゼンとは? 第十三回

カイゼンの基本13 ~品質検査のカイゼン~

先回まで製造部門が行う工程内検査のカイゼンについてお話ししてきましたが、検査は製造部門だけが行うものではありません。品質管理部門が行う最終完成品検査や生産管理部門が行う出荷前の最終検品も、お客様に製品の品質を保証するために行われています。これらの検査のカイゼンは、それぞれが別々に行われるのではなく製造部門のカイゼンとセットで行われる必要があります。

こう申し上げるのには理由があります。製造部門は直接部門として良い製品を低コストで作るために日常的にカイゼンをしており、製品製造作業だけでなく検査作業であってもカイゼンが実行されています。一方、品質管理部門や生産管理部門の検査の仕事は、製品が良品であり出荷内容に間違いがないことなどをお客様に保証するために行うことは同じなのですが、間接部門であるということから、製造部門のようなレベルではカイゼンができていない場合があるのです。しかし製造部門の生産性が向上し、生産量が増えた際に最終完成品検査や最終検品がボトルネックになりうる可能性もあるため、製造部門と同様のカイゼンが必要です。更に全体最適で効率的な検査をするためには製造部門の検査員との連動など、密なコミュニケーションが求められます。

先日ある会社のカイゼン会で最終完成品検査が品質管理部門の検査員によって実行されている現場に行った時のことです。少し前に製造部門の生産ラインのレイアウト変更が行われたのですが、その結果、品質管理部門の検査場の位置も変更され、真上にあった天井のライトの位置とずれてしまい検査員が少し暗いところで検査をしていました。製造部門の計画が最優先であり、その他の部門はそれに追従するという考え方は悪くないのですが、その対応するカイゼンが後回しにされるのは良くありません。明るさだけでなく、製品や道具の取り置きなどが製造部門のようには標準化されておらず作業動作にムダが多く残っていることがわかりました。カイゼンが後回しになっていたのです。

生産管理部門が行う出荷前の最終検品にも同様のことが言えます。加えて最終検品を担当する生産管理部門はパートタイマーの方が多い場合もあり、社員以外の人たちへの“改善”協力(指導)も必要となります。

ここで1つ事例をご紹介します。A社では、全社のカイゼンの進捗状況を製造部門と品質管理部門と生産管理部門とが一緒にパトロールでチェックしています。つい最近のことですが、参加した品質管理部門や生産管理部門の人たちがカイゼン状況のチェックをした際に、カイゼンのレベルが製造部門より低いことに気付き、製造部門のリーダーに品質管理部門と生産管理部門の現場に来てもらい、効率的な道具の置き方、作業台の設置方法や快適な作業環境づくりなどのカイゼン指導を受けました。その結果、両部門とも短期間で検査作業の動作がスムーズになり、生産性が共に上がり検査員の人手不足で困っていましたが少ない人数でも楽に仕事ができるようになりました。

一般的にカイゼンはその会社の主となる部門を中心として実行されるものです。製造部門がカイゼンされたことによって生産量が増え、検査部門が出荷のボトルネックになり得るといったことを考えると、カイゼンは製造部門だけでなく全部門で連動させて実行するべきです。主となる部門だけでなく一連の部門がそれぞれカイゼンされないと、製造部門のカイゼンは『改善された』とは言い切れないということです。まずは実際に一連の流れを見てカイゼンされていない部門がないか、ボトルネックになっている箇所がないかをご覧になってみてください。