カイゼンとは? 第六回

カイゼンの基本6 ~空いたスペースは何に使うの?1~

5Sや在庫整理はすっきりした機能的な職場を作り、無駄な在庫を持たないことで生産性や品質の向上に貢献します。これは多くの方が経験されていることだと思います。しかし5Sや在庫整理のメリットはこれだけではありません。今回はこの重要なポイントについてお話しします。

それは散らかって場所がない状態では全く考えられないことが、場所が生まれることによって考えられるようになるということです。空きスペースが生まれると同時に、いろいろな発想が生まれるチャンスも生まれているのです。

15ゲームという昔ながらのゲームで説明してみましょう。

【写真1】


最初の状態は、1~15までの数字が書かれた15個のピースと1個のダミーピースの合計16個の正方形のピースが、やはり正方形の枠にランダムな順番でぴったりと収まっています。本来は数字が順番に並んでほしいのですが、この状態ではピースを動かすことができないので、位置を変えるという発想は生まれません。そこでダミーピースを外します。

【写真2】


すると、空いたスペースを使ってコマをスライドして動かせるようになります。【写真2】では、まず6と7と15の3つのコマを動かすことができます。1コマずつ移動を繰り返して目標のコマ配置にするというゲームです。

【写真3】


【写真3】は完成形の1つです。まず左端から下に向かって縦に数字が増え、次に右の列に移動してまた下に向かうという数字の配列になりました。完成形はこれに限らずいろいろな配列が考えられます。場所が1コマ空いただけで突然にたくさんの可能性が生まれました。

それではこの15ゲームを現場カイゼンと結び付けて考えてみます。

工場に空きスペースがなく現場にモノが溢れていて、生産の度にモノを探し、運搬するときは何かをどける必要があるといった工場をたまに見かけますが、まさに【写真1】の状態といえるでしょう。現場の人は困っていますが、何もすることができません。これが常態になってしまうとカイゼンが全くできない会社になってしまいます。

しかし、【写真2】の状態になれば、現状を変える可能性が生まれます。1個でも動かしてみると、また別のカイゼン余地が生まれ、そこから大きな成果に結びつくカイゼンの道筋が見えてきます。場所があるとないとではこれだけ違いがあるのです。まず【写真2】の状態に持って行くことがいかに大切かお分かりいただけたと思います。これが5Sと在庫整理が持つ大きなカイゼンの可能性です。

5Sは清掃活動だと認識している方も多いと思いますが、機能的になって初めて5Sは機能しているといえます。15ゲームの例でお分かりかと思いますが、5Sや在庫整理をすることで場所が空くことによって新たな可能性が生まれアイデアが生まれ次のカイゼンへのステップが始まるのです。

次回から5Sと在庫整理で空いたスペースをどのように使ってカイゼンするかについてお話しいたします。