現場カイゼンレポート 第三回

運送費の低減

昨今の物流費の値上がりには驚かされるものがあります。値上げの影響を少しでも抑えるために、各社でいろいろなカイゼンが実行されていると思います。

B社は精密計測器を作っている会社です。そこでCさんがチームリーダーを務める梱包出荷チームの役割は、出力された出荷ラベルを見て、製品や同梱品を集めて梱包し、出荷場に荷揃えすることです。以前、梱包準備作業が間に合わず出荷遅れが発生したことから、Cさんのチームは宅配便の集配が来るまでの限られた時間内にすべての出荷準備を終えられるように、主に納期短縮のカイゼンをしてきました。費用の計算や支払いは事務所が一括して行っていたので、支払い費用のことはカイゼンの対象としていませんでした。しかし上司から物流費の高騰が大きいので、現場で配送単価を下げられないかという問題提起があり、コストダウンのテーマにも挑戦してみることにしました。

Cさんはまず事務所に行って、宅配便の料金体系を教えてもらいました。料金は箱の大きさ(縦・横・高さの長さの合計)と重さと配達地域で決まることが分かりました。

CさんはチームメンバーのDさんとEさんに集まってもらい、課長から宅配便の支払金額を減らすカイゼン依頼が来たことを伝え、賛同してもらいました。Cさんのチームはこれまでもカイゼン活動で工場長賞を受賞する等、カイゼン力が強いのです。取り扱う製品は用途に応じていろいろな形がありますが、まずはカイゼンの対象として最も量が多い普及型の製品を選びました。形は直方体で、大きさは約60㎝×40㎝×30㎝強、重量は10kg強の製品です。

3人で議論を始めて最初に分かったことは、3人共通の傾向として、なるべく可能な小さい方の箱を使うが、入れにくく時間がかかる場合はスピードを優先して1サイズ上の箱を使っているということでした。それ以外に、3人が別々のポジションで仕事をしているので、それぞれが自分しか知らないいろいろな工夫をしていたことも分かりました。

例えば、Dさんは製品以外にいろいろな付属物を入れているが、たとえ付属物が多い時でも、入れる順番や入れる袋を工夫すると、小さい方の箱でも入れられることがあると言いました。Eさんは箱に入れる緩衝材はプチプチを使っていたけれども、お客様からその後の処理に苦労しているという話を聞いたので、なるべく緩衝材が少なくて済むような小さい箱に入れるべきだと言いました。そして箱の形と製品の形によっては、作業順序や入れる方向を変えると、入れやすくなることを発見したと教えてくれました。

Cさんは事務所で料金体系を聞いた時に、製品の重さと配達地域は変えられないので、今回のチームが行うコストカイゼンは小さいサイズの箱を使えるようにすることなのではないかと考えていました。仲間の2人が既に小さい箱を効率的に使うことを考えていたことに驚き、コストダウンの可能性が高いと感じました。その後更に3人それぞれが小さい箱でも必要なモノを入れられるアイデアを出し合い、具体的な標準作業として共有化し、結果としてそこで作業スピードを落とさずに、一部の例外を除きほとんどの製品を小さい方の箱で発送することを可能にしました。その結果、大箱での料金の発生もなくなり、同時に緩衝材も少なくなりコストダウンに貢献しました。

また、これまで梱包作業は納入先によって仕様のバラツキが大きいので標準化は無理と思われて実行されていなかったのですが、改めて議論をすると基本的な部分は共通点が多く標準化できることが確認され、標準作業書もできました。その結果、他部門の人の応援も受けられるようになり、これまで時々起きていた出荷遅れも解消されました。

このカイゼンは本来、事務所がやるべきかもしれません。しかし実作業を知らない事務所ではできないでしょう。ではどうすればいいかですが、事務所と現場が一緒にやると更にいいと思います。

実はこのカイゼンはここで終わらず、本社の海外物流部門と連携して海外への運送費を下げる物流カイゼンに発展しました。

次回に続きます。