モノづくりの現場探求 第十八回

現場で起きた問題とDX化 ~デジタル化との関連性~

今、世間では盛んにDX化が推奨されています。私もカイゼンの視点から同様にDX化を推奨し、文章にも書いてきました。

先日ある方から、「DX化はいずれ実行しなければいけないと思っています。しかし、今は人手不足で生産に支障が起きている状況であり、まずはその対策が最重要課題です。DX化はそれが落ち着いてから考えます」と言われました。それを聞いて、これまでの私のDX化についての説明が不十分であったのではないかと思いました。そこで、今回は改めてDX化について私が考えていることを2回に渡って書いてみようと思います。

言うまでもありませんが、人手不足はこれからも続く大きな問題です。少子高齢化や若者の将来なりたい仕事の偏りなどさまざまな理由はあると思います。人手不足の問題を解消するためには、新たに人手を増やすことと、生産性を向上させ少ない人数でも生産を達成できるようにするといったことがまず思い浮かびますが、ここにDX化の1つ前のステップでもあるデジタル化を選択肢として加えて頂きたいのです。

これが解決法のすべてではありませんが、現在の深刻な人手不足を解決する糸口にはなると思っています。ここでいうデジタル化とは、コンピューターやプログラミングを用いて、これまで人がやっていた作業を機械化し操作を少しでも自動化して人の負担を減らすことです。

機械化や自動化はこれまでも生産性向上の手段として多くの工場で実行されてきたことです。前回までにお話しした発生型問題の解決などで導入されたことが多いかと思いますが、将来に向けた向上型問題としてデジタル化要素を加えての導入を検討してみてはいかがかということです。直接的な人手不足の対策として求人広告を出して人員を補ったとしても、その新人を育成し、今までの生産と同じレベルに戻すまでに必要とする資金と労力、時間は膨大です。最近の傾向としてせっかく仕事を覚えてくれたと思ったら退職してしまうというがっかりするリスクもあります。準備は要りますが新たな機械(デジタル)を導入して、今いる少ない人材で対応した場合と比較すると、どちらにリスクが多いでしょうか?もし、大きな差がないようでしたら、人材の募集は次のステップにしてみても良いかもしれないということです。

人がしていたアナログの作業を機械を入れてデジタル化した場合、もう一つのメリットがあります。人の作業に比べて生産性や効率性などさまざまな数字がデータ化しやすく、それらのデータはDX化をする上で重要な役割を担っているからです。将来DX化を検討しているというのであれば、こういったことを考えるといった選択肢もあることをお伝えしたいのです。

人手不足だからDX化は後回しということでなく、こういった機会にデジタル化も再検討することでDX化の第一歩を始めることになるかもしれません。デジタル化とDX化は別物として考えるのではなく、関連性もあるという考え方が必要です。

一番お伝えしたいことは、機械を入れるのは人より優れているからということではないということです。機械を操作するのも人間ですし、その機械が能力を発揮するようになるまでの準備も人が必要です。当然人間ほど融通の効くものではありません。デジタル化、DX化で、現在人がやっている作業を機械ができるようになっても、やはり人は必要であり大切です。例えば食品であると細かな味の調整、機械加工でいうと正確さや精密さの確認や仕上げなど、最後は人間の感覚に頼らざるを得ないことは多いです。ただし、生産性向上のためのDX化を考えた場合は、デジタル化を進めることでDX化を始めることができるという一面もあるということを頭の片隅に置いていただければと思います。