脱力・カイゼントーク 第74回

ワイガヤの意味

私はしばしば「ワイガヤ」という言葉を使います。これは、現場で現物を前にして、皆で問題点を抽出し、多くの意見をもとに分析し、解決策を考えて実行するまでを、ワイワイガヤガヤと進めることを表しています。これは私がコンサルタントとして現場でカイゼンを進める際の基本的なやり方です。

ワイガヤには、「3現主義(現場・現物・現実)」の考えが取り入れられています。「現場」と「現物」は分かり易いですが、「現実」は少し分かりにくいかもしれません。「現実」はデータや事実に基づいて判断することを指しますが、実際にはデータがそろっていないことが多く、その部分が曖昧になりがちです。その時は、ワイガヤを通じて現場の意見や観察を共有し、この曖昧さを補うことが重要な要素となっています。

しかし、ワイガヤには課題や欠点もあります。まず、ワイガヤを効果的に進めるにはリーダーが必要です。リーダーは、メンバーの意見をしっかりと聞き、方向性を示し、議論を整理して結論に導く役割を果たします。リーダーがいなければ、ワイガヤはただのおしゃべり会で終わってしまいます。コンサルティングの場では、私がリーダー役を務めますが、日頃から中堅層や若手メンバーにリーダーシップを磨く機会を提供し、リーダーの育成を進めることが大切です。これは一朝一夕では達成できませんが、地道な訓練を継続することで、経験の蓄積がワイガヤの効果を増大させます。継続は力ということです。

また、ワイガヤには成果を出すまでに時間がかかるという欠点もあります。ワイガヤでは全員で現状を把握し、意見を集め、議論を重ねることが必要で、一つの方向性を見出すにはそれなりの時間が必要です。この欠点を補う方法の一つがデジタル化の活用です。例えば、デジタルを使うと、人手ではとてもやり切れない膨大な量のデータ記録や詳細分析などが自動で作成することも可能です。これにより、ワイガヤの前半部分である「問題の抽出と分析」を効率化できます。

一方で、デジタル化にも課題があります。確かにデジタル化によるデータの収集や計算は迅速で正確であり、圧倒的な強みを発揮しますが、それを使いこなすのは人間です。どれほど立派なデータを持っていても、それを読み取り、意味を理解し、意見交換して結論を導きだす人の力がなければ、デジタル化を活用しているとはいえません。デジタル化はその強さは明らかですが、それを使いこなせる人材の育成が追いついていなければ、その恩恵を十分に受けることはできないのです。技術に頼るだけではなく、それを活用するための「人の力」と「仕組みづくり」が求められます。

つまり、ワイガヤとデジタル化のどちらが優れているという話ではありません。それぞれに強みと弱みがあり、両者を組み合わせて相互に補い合うことが重要です。これからのカイゼンには、デジタル化による正確なデータと、ワイガヤによって生まれる現場の知恵との連携が不可欠です。 そして、この連携を支えるのは「人」です。特にリーダーの育成は、デジタルとワイガヤをつなぐ橋渡しとして、今後ますます重要になっていくと考えています。