脱力・カイゼントーク 第72回

私のカイゼンアイデアの見つけ方 まとめ

少し前まで、私はデジタル化をテーマに連載を続けてきましたが、ここ数回は現場で行う物理的な『現場カイゼンをする際のアイデアの見つけ方』について、コンサルタントの視点や考え方をお話ししてきました。3回に渡る内容を振りかえると、まず現場で「その案は以前にも考えたのですが、できませんでした」などと諦めている現場は多いのです。ところが、無理と思っていても、改めて皆でしっかりやってみると意外とできてしまうことがあると申し上げました。

次にお話ししたのは、私が動作カイゼンに没頭していた時に、社長から工程カイゼンをするべきでは?と提案されてとても恥ずかしい思いをした経験から生まれた、「不要な工程や動作を省く」視点です。細かく見過ぎて視野が狭くなると、本来するべきカイゼンテーマを見逃します。より大きな視野を持ち、「この作業をやめられないか?この工程をなしですませないか?」という問いを常に持ち、不要な仕事を省くことです。

最後に、「全工程を通しで見る」ことにより、工程間で重複した仕事を一つにまとめられたり、普段あまり目が届かないところを見たりもっとシンプルにできないかという素朴な視点を持つことで、大きなカイゼンが見つかることがあるといった視点をお話ししました。

私はこれらの視点を従来の現場カイゼンの経験から抽出したのですが、これらの視点を持つことでデジタル化のカイゼンにも同様に活用できることが多々ありますのでその応用方法をまとめとして少しお話しさせていただきます。

一番目は、自分の会社にはまだ必要ない、何から手をつけていいか分からないといったデジタル化が、今では導入事例も増えて安価なものもたくさん増えてきているので、「もしこの作業を自動でできたらな」「人が足りていないけど他の方法でできたらな」などの可能性は以前よりもずっと増えてきていますのでもう一度考え直してみんなで探してみることで実現可能なものが見つかると思います。このような事例は他にもあると思います。是非とも、調べて再チャレンジをお願いします。

二番目の話は、不要な工程や動作を省くということは、すべて人の力でやらなくても良い、不要なデジタル化はしないということに繋がります。デジタル化は手段であって目的ではないのですが、いつの間にか目的化してしまい、作業を減らす目的であったものが、それならあれもこれもと必要でないデジタル化カイゼンをしてしまうということがありそうです。ゴールを明確にし、大きな視野で物事を見ることが大切です。

三話目ですが、工程全体を見て、最も効果的で、効率的なデジタル化ができているか?という視点、あるいは、製造部門中心にデジタル化が進みがちであるが、物流部門や調達部門といったサービス部門にもデジタル化を広げられないか?という視点、そして、デジタルの操作やメンテナンスなどをもっとシンプルにできないか?といった視点が大切になるということです。

私はコンサルタントとして、従来の物理的なカイゼンの経験から「現場をどう見ているか」という視点をお伝えしてきましたが、この考え方がこれからのカイゼンやデジタル化にも共通するものだと思っています。

これまでも「カイゼンにアナログとデジタルの区別は必要ない」と言ってきましたが、改めてモノづくり全体を一つのまとまりとして見ることができると確信しています。

ぜひ皆さんも、この考え方を試してみてください。また、新しい視点やアイデアをお持ちの方がいれば、ぜひ私に教えてください。共有することで、より良いカイゼンを目指していきましょう。