脱力・カイゼントーク 第71回

私のカイゼンアイデアの見つけ方 その3

先回、私は現場で「この仕事をやらないで済ませられないか?」「やめられないか?」という視点を持ってアイデアを作っているお話ししました。それを読んでくださった方から、「これ以外の視点もあったら知りたい」とのフィードバックをいただきました。そこで、今回は、私のコンサルティングのやり方から生まれる視点についてお話したいと思います。

私はコンサルタントとして、指導先のカイゼン会で現場を歩く際、普段現場で働いている皆さんとは異なる見方をしています。まず工場全体を通しで見ることを意識します。一部だけではなく、材料や部品の倉庫から生産の工程を経て出荷場まで、全体の流れを見渡すのです。その上で、普段見過ごされがちなポイントにも目を付けます。そして、最後に私は外部の人間として現場にいる時間が限られているため、シンプル化の視点でモノを見ることを心がけています。

工場全体を通しで見ることについてですが、現場で働く方は通常、自分の担当工程に注目しがちで、前後の工程との関わりをあまり見る機会がないように思います。私は毎回、材料の入荷から完成品の出荷までを全て確認します。その過程で、異なる工程で行われている作業を統合することで運搬や取り置きを減らしたりできないかというカイゼン案が見えてくることがあります。工程毎に容器から出し入れしていた動作やそれに伴う運搬が一回になるなどです。このように個々の作業動作のカイゼンも重要ですが、工程全体を見渡す視点を持つことも大切です。

次に私が注目するのは、普段現場の皆さんがあまり見ていない部分です。例えば、段取り替え作業はそれに当たります。いつもやっているわけではないことと、一回の段取り替えにかかる時間が長いのであまりじっくりと観察されていないことが多いのです。改めて皆で見てみると、一部の段取り作業の順番を変えるだけで、ものすごく機械停止時間が減ることがあります。すべて生産を止めて段取り替えする「内段取り」でしていたのを、できる限り生産をとめずに前もってやってしまう「外段取り」に変えることなどです。普段見られていないので、カイゼンされずに放置されていることが多いようですが、ここは意識的に見てみると大きなカイゼンができることが多いのです。

最後に、私が重視するのは作業の目的をシンプルに考えることです。その会社のことについての専門知識が少ない立場だからこそ、「もっとシンプルにできないか?」という根本的な問いを投げかけることができます。

例えば、製罐の現場で、大きな立体構造の面にフック状の部品を溶接する作業がありました。作業姿勢が悪く、トーチを保持するのも大変そうで、位置決めに苦労していました。また、溶接できる人数が限られており、溶接作業が重なるとボトルネックになっていました。

そこで私は、「ボルト付けの方が、作業がシンプルになるのではないですか?この製品はボルト付けではいけないのですか?」と提案しました。ボルトで取り付ける方法なら作業がシンプルになり、誰でも対応できるからです。一方で、設計上の制約などがあって実現は難しいかもしれないとも思いましたが、意外にも「気が付かなかった」という返事が返って来て、その場で設計が図面を描き始めました。この提案をきっかけに、会社全体で「溶接をボルト化できないか?」という視点で作業を見直す取り組みが始まりました。結果的に当時の約半分の作業をボルト化することができました。このような「もっとシンプルにできないか?」という視点からの問いかけが、大きなカイゼンにつながることが多いのです。

現場を見るときには、ぜひ「コンサルタントの視点」を取り入れてみてください。新しい発見がきっとあるはずです。