これまでお話ししてきたように、デジタル化を活用することで、計画的な教育訓練がより提供しやすくなることがわかります。
ただし、人材育成を進めるにあたっては、指導する側である社長自身の学びの重要性も考えてみてほしいと思っています。外部や専門部署に依頼するだけでなく、自分でも一度やってみることもが大切です。外部から学んだものを何もわからない社長にわかるように報告書を書くなど、新たな技能を社長は理解していないとなると、そこで時間や人員をさかなければならない状況が生まれてしまう可能性もあるからです。
1から10まで把握する必要はありませんが、外部に頼りつつ、自分の成長も並行して進めていくことが、今の時代には必要です。そうすることで、より深く企業としての課題や解決策も見えてきます。
食品製造のD社のE社長がつい最近、海外出張した際、現地の大手食品販売会社社長から、こんなことを言われたそうです。「日本の大会社の社長は何でも部下に聞いたりやらせたりしていて、自分で何もしていないように見える。自分で直接調べないで、経営がわかるのか?」。私も以前、スウェーデンの現地企業を指導した際、そこの社長が「私は日本に行く時は自分一人で行くが、大手の日本の社長がスウェーデンに来る時は社長以下3人以上で来る。部下が何をしているのか、社長の役割とは何か?」と疑問を呈していました。
これらの話からもわかるように、経営者自身が新しい知識やスキルを学ぶ姿勢も重要です。私もデジタル技術に関しては、つい若い人に頼ってしまいがちでした。何か新しいことをしてみようとした時に、最初にやり方を教わることから始めていました。ところが、ある若い人から「私もスマホで調べて柿内さんにお教えしているんです。まずはご自身で調べてみて、それでも分からないときに聞いてください」と“厳しめに指導”されました。まさにその通りだと感じ、それ以来、自分で調べることを心がけるようにしています。
例えば、最近ではGoogleフォームを使って同期会のアンケートを自力で作りました。以前なら他の人にまずやり方を教わっていたところですが、今回は人に教わらず、自分でYouTubeを使ってやり方を調べ、それでも分からない部分はChatGPTに質問しました。試行錯誤しながら最後には自分で完成させたことで、知識が増えただけでなく、作業の効率も向上しました。当たり前のことですが、若い人からの指摘がなければ相変わらずデジタルが得意な人に頼っていたと思います。
こうした経験を通じて感じるのは、デジタルが苦手な経営者や管理職も、これからは若者に任せきりではなく、自分自身も手を動かして経験を積むことが大切だということです。すべてを把握する必要はありませんが、最低限の興味と知識を持ち、実際に自分でやってみて初めて理解できる部分が大きいのです。
このように、「人材育成」というテーマは、古くから重要でありながらも、これからは、デジタルを活用した新しい方法で、より効果的な人材育成を進めていくことが求められます。この時代の流れに合わせ、デジタルに苦手意識を持たず挑戦、勉強を経営者もすることで、部下が取り組む姿勢にも変化が生まれてくることは確実です。担当者任せでなく、デジタルは不可欠なものだと認識し新しい人材育成の形を作り上げていきましょう!