これからの時代、新しい学びが不可欠であると前回述べました。私が社会人になった頃も、入社後多くを学びましたが、その手法は先輩から直接教わるOJTが主流でした。実践的ではありましたが、体系的な教育ではなく、仕事の意味や全体の流れを理解しないまま働いていた記憶があります。その欠点を補うために、会社には通信教育費用の半額補助制度があり、学ぶ機会はありましたが、仕事中に勉強することは認められていませんでした。また、品質を維持向上することに貢献したとされる現場のQCサークル活動も、自分の能力を高めるための学びの活動であるということで、時間外の無給活動でした。つまり、学びのための時間は個人の努力に依存しており、自分で時間を作り出さなければならなかったのです。
現在、学び直しが強く求められるのは、企業が新たなスキルや知識を得なければ生き残れないという危機感があるからです。しかし、過去のように「学びは個人の責任」とする考えでは、企業に期待される成果を十分に得ることは難しいでしょう。たとえ業務時間内の学習が認められても、「時間は自分で捻出しろ」とか、「空いた時間を活用しろ」という環境では、落ち着いて学ぶことはできず、期待する成果にも到達しにくいどころか一歩間違えるとブラック企業と呼ばれてしまうかもしれません。
学び直しの効果を最大限に引き出すためには、企業が計画的に学びのための時間を提供することが必要です。例えば、会員企業のC社では、月に一度「カイゼン日」を設け、その日は午後に仕事を入れず、従業員がカイゼン活動や勉強に専念できる時間を確保しています。この日を設けることに対し、当初は仕事への支障や、生産性の低下が懸念されましたが、結果的には会社の経営目標達成に大きく貢献しました。このように計画的に時間を確保することは、学びのための取り組みの成功例にもなっています。
また、業務が個人や部署ごとに異なり時間管理が複雑な場合、会社が従業員のスケジュールを管理し、適切なタイミングで学習機会を提供することが重要です。しかし、紙ベースでの全体的なスケジュール管理は非常に難しいため、デジタルツールを活用してスケジュール管理を行い、仕事の進捗や空き時間を見える化し、各従業員に最適な学びの時間を提供することから始めてみましょう。例えば、kintoneのようなツールを使えば、従業員の仕事の進捗やスケジュールをリアルタイムで管理できます。無料のツールとしては、Googleフォームなども活用可能です。デジタルツールを使うことで、これまで難しかった時間の調整などが簡単になり、参加者の活動も見える化できるためモチベーションも向上し、学びがより積極的に継続されることにもつながります。そして、こういった機会からデジタルを導入するというのはとても良いきっかけになります。
これから国が「リスキリング」に力を入れると宣言したことは素晴らしいことですが、最終的には各企業が従業員に適切な学びの場と時間を提供することが求められます。積極的にデジタルツールの活用などを行い時間管理の効率化を図ることは、企業がこの課題を解決するための重要な鍵となります。皆で勉強して効率的な学びを実現していきましょう!