10回以上にわたり、日本の製造現場で私が目指すデジタル化の姿と、その実現方法についてお話ししてきました。デジタル化は、従来のカイゼンのように確立された手法があるわけではなく、まさに日々新しい技術や考え方が登場している、現在進行形の動きです。そのため私自身も常に新しい情報に接し、試行錯誤しながら体系化を目指している状況です。
これまでの話を踏まえてデジタル導入のきっかけになるような話を、今回は少し視点を変えて、私が日常生活においてどのようにデジタル化と向き合っているかをお話しします。
もともと私はデジタル製品を使うことが好きでした。若い頃、時計やカメラ、万歩計など、アナログであった道具がデジタル化されると、比較的早い段階で使っていました。当時のデジタル化は今のようにはコンピューターやアプリと連携していないシンプルなデジタル化だったため、特に使うに当たって困難は感じませんでした。しかし、現在はウェブでコンピューターやアプリと連動するような高レベルのデジタル化なので、便利になる一方で、そのやり方を知らないと使いこなせないことが増えています。変化のスピードに追いつくために努力はしているものの、正直「なかなか大変だな」と感じる場面も多いです。
だいぶ以前のことですが、ファックスを自分で送れずに部下に頼む部長や、自動販売機で切符を買えない役員の話を聞き、呆れたことがありました。しかし時代が変わり、今度は私が同じ立場に立っていると気付き、何でも人に頼まず、まずは自分でやってみることにしています。
私は出張で切符を買う機会も多いため、できるだけ切符の枚数を減らして費用を抑える工夫をするのが好きです。以前はみどりの窓口で担当者を困らせていましたが、今は窓口が激減しています。そこでパソコンや自販機で同様の切符を購入する「自分が困る挑戦」をしています。
Web会議が増え、Zoomだけでなく、TEAMSやGoogle Meet、Skypeなど、さまざまなツールがありますが、それぞれ微妙に操作が異なるので、本当は慣れたZoomを使いたいのですが、基本的に相手の方のご希望に合わせることとして新しいツールにも積極的に挑戦しています。また、以前にもお話ししましたが、私はカイゼンをテーマにしたYouTubeチャンネルも運営しています。続けるのはなかなかハードルが高いですが、「世の中の変化に付いて行く」、「製造業の役に立つ」という目的を持って続けています。また、流行なども教えてもらいショート動画といったものにも挑戦し、どのように届けるのかみてもらうのかの分析も同時に学んでいます。
最近では、海外にある日本企業の工場でカイゼン指導をする機会もあり、羽田発便で出国しましたが、無事に出国できるか非常に緊張しました。コロナ禍以前と比べると空港の手続きが大幅に自動化されていて、チェックインから荷物預け、入国審査まで、以前なら係の人と対面で行っていたことがすべて自分一人でやるようになっていたからです。周りの人の動きを見ながら何とかクリアできましたが、初めての経験はやはりドキドキしました。「それが嫌だから飛行機は乗らない」という人もいるかな…とも思ったくらいです。
以上の様に、最近のデジタル化は以前と較べて自分でやることが増えた分、難しいのです。多くの会社でメールからチャットへの移行が試みられていますが、慣れ親しんだ仕事スタイルの変化に対して反発が大きく、なかなか実現が難しいと聞きます。私もその気持ちは理解できます。しかし、世の中の変化に対応するためにも、自分のスキルを磨き、デジタル化に挑戦し続けることが重要だと感じています。日々新しい技術が登場し、デジタル化が進むことで、私たちの生活や仕事のやり方も大きく変わっています。時に戸惑いや困難を感じることもありますが、それは新しい変化を受け入れ、前進している証拠だと思います。製造現場でのカイゼン活動も、日常生活も、デジタル化が進むことでより多くの可能性が広がっています。私自身、常に新しい技術やツールに挑戦し続けることで、自分のスキルを磨き、時代の変化に柔軟に対応していきたいと思っています。変化を恐れず、チャレンジする気持ちがこれからの時代には必要であり、それが新たなカイゼンやデジタル化の成功につながると信じています。