脱力・カイゼントーク 第62回

ペーパーレス化の次のステップ まとめ

デジタル化によってできる最初のカイゼンの変化として、①情報の共有化、②見える化、③自動化、④速度感の向上があるという話をしましたが、今回はそのまとめです。

①から④のそれぞれにおいて、日本の製造業には克服すべき課題があります。

まず、①情報の共有化です。ボトムアップのアプローチが得意な日本の製造業では情報の扱いが部門ごとに最適化されがちで、その結果、全体を見据えた情報の共有が苦手という面があります。これを改善するためには、トップが情報共有の方針を明確に示し、トップダウンでどの情報を共有すべきかを指示して、全体最適を目指すアプローチが必要です。トップの意思決定と社員への共有が最初の重要な共有となります。

次に、②見える化についてです。日本では5S活動が普及しており、見える化も進んでいると感じます。しかし、「5S」という手段に重きが置かれ、本当に何を「見える化」すべきかが見失われがちです。ここで重要なのは、何が見えていて何が見えていないのかを明確にし、その中で必要な部分を探しデジタル技術を活用してさらなる見える化をすることです。

そして、③自動化ですが、設備的な自動化は既に高いレベルに達している企業は多くありますが、デジタル設備から得られる情報の活用には、まだ大きな可能性が残されています。ペーパーレス化によって蓄積される情報の量が増えるので、それを効率的に管理・活用するための情報自動化が、今後の経営判断を迅速化し、レベルアップする重要な要素となると思います。現状に満足せず、将来を見据えた戦略 が求められます。

最後に、④速度感の向上についてです。情報作成の自動化が進むことで、経営判断に必要な情報をリアルタイムで入手できるようになります。その結果、経営判断における速度感が劇的に変わります。単なる問題解決型の経営ではなく、 「カイゼンに終りなし、今が最低と思え!」と考える課題達成型の経営にシフトすることが大切になります。

先日、休日に地方都市で急に振り込みをする必要が生じました。 Googleマップで調べて3つの銀行を回りましたが、ATMが閉まっていたり、開いていても送金できなかったりしました。最終的にセブンイレブンで振り込みができましたが、その地域では銀行ATMが休日は使えないと知った経験から、地域による速度感の違いを強く感じました。日本全体も世界ではこうした速度感で動いているのかもしれないと思います。時代に合った速度感を持って、迅速な対応を心掛けることが、今後の課題解決につながると確信しました。

デジタル化によって可能になるカイゼンの変化を4つに分けて説明しましたが、一部ができただけでは部分最適に過ぎません。すべてが連携して実行されることで、全体最適を目指すことが必要です。そのためには、経営者がデジタル技術に詳しい部下や専門家と、この4つの項目について議論し具体的なカイゼンの方法を考え、実行計画を立てることが重要です。トップダウンでの方針決定と、現場のボトムアップのカイゼン活動を組み合わせることで、現場と経営の両方に効果的なデジタル化によるカイゼンを目指しましょう。

これからも継続的に賃上げを実行していくためには、デジタル技術を活用して、既存のカイゼン活動をさらにレベルアップさせることが必要です。皆で協力しながら、さらなる成果を目指すカイゼンを実行していきましょう!