デジタル化によってできる最初のカイゼンの変化として、①情報の共有化、②見える化、③自動化、④速度感の向上が主になると思うとお話ししましたが、今回は3つ目の「自動化」についてお話しいたします。
日本の工場では、既にかなりの設備の自動化が進んでいます。特に中小製造業では、カイゼン活動と自動化を組み合わせることで、必ずしも大規模な投資をせずに効率的な生産を実現しています。その結果、作業者が常に機械に付きっきりで作業するような光景は、特殊な加工や試作以外ではあまり見かけなくなりました。私が関わるカイゼン会でも、設備の自動化に関するカイゼンが頻繁に行われており、検査工程の機械化、自動搬送装置(AGV)や協働ロボットの導入などが、多くの工場で進められています。これにより、生産性の向上やリードタイムの削減が実現されています。
しかし、最近、一つの新しい課題に気づきました。それは、多くの工場が自動化の目的を生産性や品質の向上に留め、次のステップであるデジタル情報を活用した経営品質の向上には踏み込んでいないのです。
最近の設備はほとんどがデジタル化されており、さまざまな情報を収集することが可能です。これまでにもお話ししましたが、デジタル化設備の稼働状況をリアルタイムで記録し、予防保全を行うことができます。また、これらの情報をクラウド上で共有することで、現場だけでなく、経営者・管理者や他部門とも情報を共有し、迅速な意思決定を支援することが可能です。
にもかかわらず、実際には、生産性向上が達成された後にデジタル情報を活用するステップに進む企業はまだ少ないのはなぜでしょうか?設備の自動化は、導入後すぐに生産性や効率向上の成果が目に見える形で現れるのに対し、デジタル情報の活用は短期的にはその効果が見えにくく、人材育成など長期的な投資が必要だからということもあると思います。また、製造業では、現場第一主義や職人技術が重視される傾向があり、データや情報を扱う文化が根付いていない企業では、デジタル化から得られる情報の重要性が十分に認識されていないこともあります。そのため、両者の進展には差が生じやすいのです。現在の仕事の状況だけを見ると、生産性向上の成果が出ればそれで十分だと考えるかもしれませんが、これからの時代を見据えると、それでは不十分です。
近年、AI技術が急速に実用化されつつあります。現在はまだ一部の先進企業でしか使われていませんが、最近の技術進化のスピードを考えると、近い将来、AIが製造業でも当たり前に使われる時代が訪れるでしょう。すなわち「設備の自動化」に次いで「情報の自動化」の時代が目前に近づいているのです。その時に備えて、今からデジタル技術を活用してデータの蓄積を開始し、分析する習慣を身につけることが非常に重要です。その準備を怠ると、いざという時に対応が遅れ、競争力を失う危険があります。
将来のモノづくりの姿を想像しながら、その入り口ともいえる情報の自動化に向けたカイゼンを始めましょう!