私はこれまで、日本の中小企業がデジタル化に取り組む際には、現場カイゼンの力を活用したボトムアップのアプローチを取るべきだと提案してきました。これは、私が提案するカイゼン同様に経営者、管理職、一般従業員、そして、営業、設計、技術、管理などが一体となり、全体最適のスタンスで議論し、協力して実行する方法です。実際にどのような手順を踏んでデジタル化を行うかについてはきちんと説明しておりませんでしたので、今回その点についてお話しをいたします。
従来のカイゼンでは、個人や現場単位での対応が可能でした。例えば、重い物を持てない場合には台車を活用するなど、個々の判断で対応できました。しかし、デジタル化においては、ペーパーレス化一つを取っても、ウェブ環境の設定やタブレットの購入などの前準備が必要となることがあります。これは個人で動き始めることは難しく、まず社長がデジタル化を決断する必要があります。欧米では、プロジェクトの指示をトップダウンで専門部署に出すことが一般的です。日本においては、これまでのカイゼンの蓄積を活用したボトムアップの力も重要です。多くの関連する部署が参加するアプローチが理想的だと考えられます。
デジタル化を進めるためには、まず社長がデジタル化の導入を決め、従業員にデジタル化の必要性と導入のメリットを説明し、納得してもらうことも重要です。
現場で働く多くの人にはデジタル化に対する苦手意識があるため、トップダウンで一方的に進めると、付いてこれない人、拒絶をする人が出てくる可能性があります。それでも決断をしないわけにはいかないこともありますので、デジタル化を導入する際に可能な限りそのようなことを防ぐため、ボトムアップのスタンスのようにより多くの方に参加してもらい、使いやすくするための意見交換も必要になってきます。一例ですが、デジタル化したいテーマを選んで、まずは無料で使えるソフトや既存のソフトを使って、部長クラスや現場のいろいろな層の人に使ってもらい、やりにくい点を抽出し、どうすれば使いやすくなるかの意見を出してもらいます。
例えば、紙の日報をタブレットに変えて入力する場合、まずタブレットを1台用意し、試してみます。そこで得られた意見を基に、可能な限り皆が使いこなせる使いやすさと妥協点を追求します。意見が出なければ、そのまま導入することになるという厳しい状況を理解してもらい、多くの人から意見を出してもらいカイゼンを織り込み、デジタル化を実行します。
最初は戸惑った従業員も、徐々にデジタル化された仕事に慣れるにつれ、自律的なカイゼンが始まります。使えないものを無理強いした場合はなるべくその作業を避けて他人に任せる人をよく目の当たりにしてきました。それが自分でも使えるものでしたら、より興味を持ちその後の情報をさらに活用し、より分かりやすい経営数値を自動的に出せないかといったカイゼンのアイデアが生まれることもありますし、従来の自発的なカイゼン活動がこの場面でも活発になるでしょう。
すなわち、デジタル化カイゼンとこれまでのカイゼンとの違いは、始めるに当たって社長の実行の決断と、従業員に対する教育や意見聴取など上手に立ち上げる手順を踏む必要があるということです。それを乗り切れば、従来同様のボトムアップのカイゼン活動にデジタルを導入して動き始めることと思います。
デジタル化を始める第一歩は経営者の決断です。デジタル化は避けられないため、まだ動き始めていない場合は、すぐに決断してください。具体的なことでお困りの場合は、カイゼンプロジェクトまでご相談ください。