脱力・カイゼントーク 第48回

カイゼンはトップダウン命令型よりボトムアップ伴走型 問題提起

ある会社の社長から、カイゼンが進まないのでカイゼン指導をしてほしいという依頼があり、早速ウェブでお話を伺いました。

社長は「カイゼン・改革なくして成長なし!」と言って従業員に檄を飛ばしているが、彼らは一向にカイゼンを積極的に実行しない。そこで、コンサルタントにもっと強く言ってもらい、カイゼンを強力に押し進めてほしいということでした。しかし、私は、カイゼンはトップダウンの押しつけ型ではうまく行かないと考えています。従業員が自発的に動くボトムアップのアプローチが効果的だと考えているため、今回の依頼はお断りしました。とはいえ、ボトムアップ型のカイゼンにすれば必ず良くなるわけでもありません。そこで、今回はボトムアップ型カイゼンを成功させるための条件について考えてみます。

まず、なぜ私が上から強く命令するトップダウンではカイゼンが進みにくいと考えるかをご説明いたします。トップダウンの場合、指示した通りに仕事をしてもらう必要がありますが、意図が伝わらず間違いが起きた場合はそれを指摘する必要があります。強い命令や叱責が続くと、従業員は失敗を恐れ、言われたことだけを行うようになります。その結果、言われた以上のことをして失敗するリスクを避け、自分で考える意欲を失ってしまいます。さらに、命令の効果が薄れるとカイゼンが行われなくなるので継続力がないのです。カイゼンとは、自ら問題点や課題を見つけてより良くすることです。言われたからやるという姿勢では本当の意味でカイゼンにはなりません。そのため、強い命令口調のトップダウン型のカイゼン指示は効果が薄いと考えます。

一方で、ボトムアップ型のカイゼンにも課題があります。ボトムアップ型は従業員の自主性に重きを置きますが、もし任せ切りにすると、放任状態を招く危険があります。従業員がいくら良いカイゼンを行っても、経営の方向性と一致しなければ効果は限定的です。

しかし、ボトムアップ型カイゼンが成功すれば、経営者は経営が楽になります。従業員が会社の目指す経営の方向を理解し、それに向けたカイゼンを実行するだけでなく、現場目線から見た問題点も解決するため、大きな成果に結びつきます。ここを変えたら楽になるといった快適性の追求や、作業姿勢が悪くて腰が痛いので何とかしたいといった不満の解消が生産性の向上となり経営の向上に繋がることはよくあります。

つまり、真のボトムアップ型カイゼンを実現するには、経営者がしっかりと準備をすることが重要だということです。そのためには経営の方向性を示し共有する必要があります。次に、カイゼン活動の条件を設定し、サポートを約束します。難しい局面があることも予測して前もって覚悟してもらうことも必要です。そして、従業員に活動における自主性と自由度を与えます。活動への期待も伝えて、成果が出た時はしっかりと評価をすることも大切です。

この体制の下で、従業員は自分達の問題はもちろん、組織全体の問題や課題に対しても知恵を出し合い、協力してカイゼンを実行してくれることでしょう。その結果、このカイゼンは会社のためだけでなく、従業員自身のためにもなり、自己成長にもつながります。このようなアプローチが取られれば、持続可能なカイゼンが実現し、企業全体の成長にもつながります。

次回に、続きます。