脱力・カイゼントーク 第47回

思い込みによる失敗 カイゼン実施

今回のエアコン修理の失敗経験を通じて私は2つのことを考え、工場でもカイゼンを始めました。

1つは、チェックリストのカイゼンです。
「●ブレーカーまたはヒューズが切れていませんか?」の質問に加えて、例えば「部屋の電気が点いていてもエアコンのブレーカーが落ちていることがありますので、配電盤をご確認ください」と追記してあれば、私の場合は正しい対応ができたと思います。しかし、それでも分からない人や環境もあると思いますので、いろいろな状況を想定した議論が必要です。現場でいうとチェックリストや標準作業書にカイゼンの余地がありそうです。

外国人作業者が多い機械加工のR社では、これまで日本語の作業手順書などを外部の専門業者に翻訳してもらっていましたが、今回、その翻訳文章をウェブの翻訳ツールを使って日本語に逆翻訳してみました。すると、分かりにくい表現の個所がかなり多く見つかりました。翻訳の専門家といってもモノづくりには詳しくないので仕方がないとも言えますが、大きな問題です。これまで一部の作業者は内容をよく理解しないまま作業をしていた可能性があるということです。そう考えると、思い当たる節がたくさん出てきました。そこで、日本語が上手になった作業者も交えて、より分かり易い作業手順書づくりを始めています。

2つ目は知識不足を補うための情報提供です。工場では多くの人々が各自の専門分野で働いていますが、全員がすべての設備やシステムの詳細を理解しているわけではありません。今回の私のエアコンの件のように、ちょっとした知識不足や誤解が思わぬ障害となることがあります。例えば、生産ラインが突然止まった場合、原因は単純なヒューズ切れやスイッチの誤操作かもしれませんが、それを誰もが即座に思い浮かべることができるわけではありません。「当たり前」と思われることでも、一部の人にとってはそうではない場合があります。私のような人は少数かもしれませんが他にも必ずいると思います。1回知ってしまえば当たり前のことでも、経験していなければ分かりません。知らない、あるいは理解していないという事実には問題が起きて初めて気付くことが多いですが、気付いたとしても恥ずかしいので黙っていることがほとんどでしょう。そこでこうしたことが起きた場合に、それらの情報を共有する場を設けることを勧めています。

建築資材製作のS社では全員からヒヤリハット情報を収集し、毎週金曜日の午後一番に10分ほどかけて、大切な情報を現場で共有し、カイゼンアイデアを出す場を設けています。短い時間ですが、情報共有の効果は大きく、カイゼンが横展開されるスピードが上がっています。

このような取り組みを進めることで、工場内でのトラブルを未然に防ぎ、効率的な生産を実現することができるようになります。今回のエアコントラブル対策の失敗を通じて、私自身も多くを学びましたが、この経験を生かして、工場で働く皆様が同じような遠回りをしないようにカイゼンして参りたいと思います。