7月のご挨拶

先日、日本カイゼンプロジェクト事務局長の堀木氏から連絡がありました。

「カイゼンについて面白い意見を言っている人がいるので、ぜひ読んでみてください」

早速読んでみると、内容はカイゼン活動に対して批判的なものでした。その中心は、「今、ビジネスで必要なのは全体最適であるが、カイゼンは部分最適で、業務の暗黙知化を加速する」という主張でした。記事には、「カイゼンによってどれだけ生産性が向上したかという数字は残っても、どのような方法で実現したのか、なぜうまくいったのかが言語化されていないケースが多い」とも書かれていました。なるほど、確かにそういう事例があることは否定できません。

日本の製造業は、ボトムアップのカイゼンによって品質や生産性を向上させ、大きく発展してきました。しかし、最近の基幹システムの構築や組織全体の変革のようなテーマでは、各部門がそれぞれ良かれと思ってカイゼンを進めても、会社全体の方向性が揃っていなければ、全体としてはうまく機能しないことがあります。

例えば、ある工程だけをカイゼンしても、後工程が追いつかなければ会社全体の利益にはつながりません。購買部門が材料をまとめ買いして帳簿上の単価を下げても、使い切れずに在庫が増えれば、結果としてコストアップになります。また、製造部門が効率だけを追求して人員を減らした結果、突発対応ができなくなり、営業に負担をかけることもあります。

このような事例を見ると、「部分最適だけでは不十分で、全体最適が必要だ」という意見は、その通りだと思います。しかし私は、「だからカイゼンは部分最適に過ぎない」と結論付けるのは少し違うのではないかと思います。確かに、一人の担当者が自分の仕事だけをカイゼンしているのであれば部分最適です。会社全体の方向性が明確になっていて、その実現のために各部門が連携してカイゼンを進めるのであれば、それは全体最適を目指すカイゼンになります。

私はこれまで多くの会社でカイゼン活動をお手伝いしてきました。その中で成果を上げている会社には共通点があります。それは、経営者が「会社をどの方向へ進めるのか」という戦略を明確に示していることです。その戦略に基づいて、設計、営業、製造、購買など、それぞれの役割を決めてカイゼン活動を進めます。これはトップダウンです。一方、カイゼンのアイデアそのものは現場から生まれます。これはボトムアップです。

つまり、トップダウンとボトムアップの両方があって初めて、全体最適に近づくことができるのです。全体最適だけを語っても、具体的な行動がなければ何も変わりません。逆に、現場だけが一生懸命カイゼンしても、会社全体の方向とずれていれば成果は限定的です。大切なのは、全体最適を目指しながら部分最適を積み重ねることではないでしょうか。

もう一つ重要なのが、改善内容を全社で共有することです。例えば、カイゼン発表会や見える化は、そのための大切な仕組みです。カイゼン発表会が単なる報告会ではなく、お互いの改善を学び合い、新しいアイデアや横展開につなげる場になるよう工夫している企業ほど、成果は大きくなります。見える化も同じです。ただ「見える」ようにするだけではなく、「見せる」ための工夫をし、さらに「見えた」で終わらせず、「見て、考え、行動する」までできるようにすることが大切です。

経営者が進むべき方向を示し、現場が知恵を出してカイゼンを積み重ねる。そして、その成果を全社で共有し、さらにカイゼンを深めていく。この繰り返しが、会社全体の大きな成果につながります。

私は35年以上カイゼンに携わってきましたが、全体最適と部分最適は対立するものではなく、互いに支え合う関係だと考えています。全体最適という地図があり、部分最適という一歩一歩がある。その両方があって初めて、本当のカイゼンが実現するのだと確信しています。

今年の夏も猛暑が予想されています。暑さ対策を十分に行いながら、全体最適を目指したカイゼン活動を進めていきましょう。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫