6月になりました。梅雨の時期、外出ができない際には雨の音を聞きながらゆったりと読書をすることもいいかなと思います。
デジタル化が急速に進む中で、私たちの生活や仕事のスタイルは大きく変わってきました。現場カイゼンのコンサルタントとして、私はこれまでの日本的なフィジカルなカイゼンと、自分たちならではのボトムアップでのカイゼンを土台に、さらなる最適化を求めデジタル化を提案してきました。つまり、基本の動きや考え方を大切にしたうえで、必要なところにデジタルを組み込むというスタイルです。デジタル化は大きな成果を生む可能性が高く、積極的に進めるべきだと考えています。
とはいえ、「何でもデジタルが正解」とは思っていません。場面によってはアナログの方が効率的なこともあり、両者の使い分けが重要です。
例えば「本を読む」という行為ひとつとってもそうです。以前、私はKindleを愛用しており、海外出張中でも欲しい本をすぐに購入でき、何冊でも持ち運べる利便性に惹かれていました。ところが最近、紙の本に戻りつつあります。ページをまとめてめくったり、自由に書き込んだり、折り目をつけたりすることで、自分の思考が本とつながっていく感覚があり、本来の目的である「内容の理解」が紙の方が高いと気付いたからです。先日も、数年前に読んだ本を再び開く機会がありました。ページの隅に走り書きした言葉に目が留まり、「あのときはこう考えていたのか」と懐かしく思うと同時に、新たな気づきも得られました。電子書籍では得にくいこの体験が、私には大きな価値と感じられるのです。
ただ、これはあくまで私のケースです。デジタルに慣れた若い世代には、電子書籍の方が向いているかもしれません。大切なのは、両方を試してみて、自分に合った方法でより多くの成果を上げることだと思います。
このことは、現場の道具選びにも通じます。ベテランが新しい道具を試してみた結果、やはり昔の道具の方が出来栄えも能率も良かったという話はよくあります。食わず嫌いで新しいものを避けるのはよくありませんが、比較したうえで古い道具を選ぶという選択もあり得ます。
最近では、レストランの注文もタブレット式が増えてきました。以前のように人が伝票に記入していた時代に比べ、注文のスピードや省人化、あるいは売り上げ集計の自動化など、経営面での優位性は明らかです。私自身、カイゼンの視点から見れば、紙の伝票やメニューなどのペーパーレス化は積極的に進めるべきだと考えています。
しかし、お客様の立場に立つとタブレットの画面は小さく、メニューが多いと商品を探すのが大変です。こうした課題を考慮してか、店舗ごとに運用スタイルが異なります。タブレットだけで完結させる店もあれば、紙のメニューと併用する店、あるいは季節のおすすめだけ紙で紹介する店もあります。
私が最も使いやすいと感じるのは、すべての料理を紙メニューでざっと見て注文を決定し、注文操作はタブレットで素早く行うスタイルです。これはまず紙を使わないカイゼンを進めた上で、お客様視点でのサービスを追加して新たにデジタルにアナログを組み合わせた例だと思います。これは「全体を把握してから、全体最適で効率的に実行する」という現場カイゼンの考え方に通じます。紙のメニューがあることでお客様に選ぶ楽しさや納得感が生まれ、タブレットによってお店では注文の待ち時間、配置人員、あるいは売り上げ集計の手間が減る。お店とお客様、双方にとってメリットのある方法です。
デジタルの力を使って効率を上げることは必要不可欠です。しかし、それだけでなく、サービスや満足感といった観点からの見直しも忘れず、全体最適を考えたカイゼンを進めていきたいものです。