11月のご挨拶

私は毎週・毎月のテーマを見つけ、日本カイゼンプロジェクトのメルマガに文章を書いていますが、テーマ探しには度々苦労しています。情熱を持って伝えたいテーマがあれば、自然と文章は進むのですが、そうでないと本当に筆が進みません。「まだはっきりとイメージできていないけど、このテーマで書けたらすごいぞ!」と思って書き始めても、実際にはなかなかまとまらずに七転八倒することがしばしばです。なので、日頃から問題意識を持ち、日常の小さな出来事からヒントを得てアイデアをメモしておくことの重要性を痛感しています。

先日、ある会社の現場の監督者と雑談していた時のことです。彼が「12月は繁忙期で来年の計画作りもあるのですが、11月は大きな問題もなく、少し気が楽です」と話してくれました。もちろん、問題が無いことは良いことですが、「問題が無いのでのんびりできる」という意味であれば、少し物足りないと感じました。そこで「11月は12月に備えて、思いっ切りカイゼン活動ができますね」と投げかけると、「もちろんです!」と嬉しい返事が返ってきてホッとしました。

このように、常に備える姿勢は非常に重要です。大きな注文が入ったり、急な問題が発生したりといった緊急性の高い状況では、製造部門で共通の問題意識が生まれ、現場全体が一丸となってカイゼンのアイデアを出し合います。しかし、緊急性の高い状況がない「普通の時」には、時間があってもカイゼンのアイデアが出にくくなり、「この程度で良いか」と考えてしまい、結果としてカイゼンの機会を逃すことがあります。

経験上、閑散期と繁忙期がいつ頃来るかはある程度予測できます。事前にそれぞれの月にどのような対応をするか計画し、カイゼンを実行していけば、常に先を見据えた対応ができ、慌てたり一喜一憂したりすることなく、着実に前進できます。例えば、比較的余裕のある月に繁忙期にはできない大きなカイゼンを実施し、次の繁忙期に備えるのも良い方法です。

精密機械加工のE社は、リードタイム短縮に注力し、工程の流れと運搬順序を一致させ、設備間の運搬を最小限に抑えることを目指しています。そのために設備レイアウトの変更が必要になることがありますが、設備の移動には時間がかかるため、中期的な生産計画を見据え閑散期にレイアウト変更を計画的に実施しています。多くの企業は、レイアウト変更は大規模なカイゼンであり、よほどのことがない限り実行できないと考えがちです。しかし、E社はこのように計画的にレイアウト変更をこまめに実施することで、ほとんどの運搬を近距離の1個流しや小ロット運搬とし、短いリードタイムで生産を行っています。

一般的に、11月は平穏な月であるという見方はあると思います。一見、問題がない平穏な状況は良いことに見えますが、「問題がない」ことこそが新たな発展を妨げるリスクになることもあります。日頃から「何かカイゼンできることはないか?」と探し続ける意識が大切です。11月は師走に向けての準備の月でもあります。皆さま、どうぞこの時期にカイゼンに力を入れ、準備を整えてください。

偉そうなことを言ってしまいましたが、実は、私自身も相変わらず文章のネタ探しに苦労しています。皆さまのお役に立つカイゼンのアイデアを蓄え、どんな時でもスムーズに書けるように高いアンテナを張って頑張りたいと思います!


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫