9月になりました。
先日、私が講演を行った際、30年前にカイゼンコンサルタントとしてのキャリアをスタートした当初から支えて下さっていた社長さんが参加してくださいました。その方は、私の本を購入してくださったり、社員を講演会に参加させていただいたりと、長年にわたって支えてくださっていたのです。そして、その社長さんが私のカイゼンコンサルタントとしての「継続」する力を褒めてくださり、私はその言葉に非常に感激し、深く考えさせられました。
そこで今回はその「継続」について考えてみたいと思います。
「継続する」ということは、「やめない」ことです。経営が順調であればチャレンジを継続するのは当然です。あるいは、赤字が続いて回復の見込みがなければ、やめることもひとつの選択肢です。しかし、赤字ではないものの黒字でもないという微妙な状況ではどうすべきでしょうか?やめることも一つの選択肢ですが、継続することもまた選択肢です。利益が出ていないからといってやめるのは、一見正しい判断のように思えます。特に最近では「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が使われるようになり、時間がかかることを避ける風潮が広がっています。しかし、仕事を始める時にはそれぞれに実現したいこと、達成したいことがあったはずで、それがいつの間にか利益という尺度で判断され、本来の目的を見失っている可能性もあります。
私は過去に何回かこのような選択を迫られる状況になったことがありますが、継続を選びました。本来の目的を実現するということにチャレンジして、すぐに結果が出ないこともしばしばありましたが、継続したことで最後は目的に到達することができました。また、「継続」ということ自体が別の評価を生んだり、これまで全く考えていなかった新しい方向性が生まれたりすることも多くありました。
世の中の変化が激しい時代において、継続するためには、常に新しいことに挑戦し続けることが求められます。新しいことをチャレンジしながら継続するということは時に苦しく、やめたくなることもあります。しかし、続けていくうちに、それが自分の中で普通のこととなり、特別な事ではなくなってきます。そしてその結果、続けたことで新たな挑戦の苦手意識が減り、次の方向性が見えてくることもあります。私が「継続」という選択を大切にしている理由はここにあります。短期的な利益だけにとらわれず、長期的な視点で継続すること大切さを何度も体験しているので、継続の価値を確信しているからです。
以前にもお話ししましたが、コロナ禍で外出が制限された際に、『柿内幸夫の現場カイゼン研究所』というYouTubeチャンネルを立ち上げました。お客様と直接接することができなくなり、何らかの方法でこちらからモノづくりの情報を発信したかったためです。全く知識も経験もありませんでしたが、若い方々の力を借りながら始めました。コロナが落ち着いて外出が可能になった現在でも、このチャンネルを続けています。制作にかかる手間は小さくありませんが、それにもかかわらずまだ黒字と言えるような結果には結びついていません。短期的に収益を追求するのであれば、やめた方が良いのかもしれませんが、私は続けるつもりです。なぜなら、私の目的は利益ではなく、新しい人々と出会い、世の中の変化に対応する力を養うこと、そして多くの方々にモノづくりカイゼンの魅力を伝えることだからです。
「日本カイゼンプロジェクト」の運営も同じ目的で行っています。日本の中小製造業の実力向上を支援し、その力を少しでも高める手助けをしたいと考えています。
継続は単なる忍耐ではなく、新たな機会や発見をもたらす力です。もちろん、赤字を止められないような場合は継続することは選びません。ただ、私自身がどうしても実現したいこと、例えば遅れが指摘されている日本の中小製造業のデジタル化を、カイゼンの力で後押しし、再び世界で活躍するサポートをしたいと思っています。私自身分からないことがたくさんあり、まだまだ多くの課題がありますが、それを諦めずに継続して取り組んでいきたいと考えています。
日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫