3月のご挨拶

 3月になりました。

昨年末から厚生労働省が「屋外では季節を問わず、マスクの着用は原則不要」のルールを提示していますが、マスクを外して歩いている人はまだわずかです。先日ある高校の卒業式の様子がテレビで放映されていましたが、「マスクを外すことを基本とする」という文部科学省の通知が出ていたのにもかかわらず、全員がマスクをしていました。3月13日からは「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」ことになりマスクの着用は原則不要となりますが、同調圧力が強い日本ではこれでもなかなかマスクは外されないかもしれません。

マスクだけを捉えると些細なテーマと思われるかもしれません。しかし私は今回のマスクに関する政府の判断は実は経営に関する大切な要素を含んでおり、ここでの対応が今後のビジネスにおける大きな分岐点になると思っています。そこで個人はともかくビジネスにおいてはこのような「石橋を叩いてもまだ渡らない」といった動きはしてはならないと考えます。

マスクをしろという事は、人と会って話さない事を推奨していましたから、私達は外出を控え人との接触を断ち、情報交換はウェブ会議とメール中心になりました。以前にもお話ししましたがウェブ会議は移動や時間設定の面で大変に効率的な手段ではありますが、一方で失われたことも多くあります。今後マスクが義務でなくなるという事は、再び移動して人と会えるようになるのですから、ここで躊躇せずウェブとリアルの両方の良さを取り入れた新しい効率的なビジネスのやり方を始めることが大切だと考えます。

例えば営業ではリアルな対面も可能になり、お客さまとの接し方が一気に広がります。ウェブ会議だとビジネス一辺倒になりがちですが、リアルの場合はちょっとした雑談や寄り道から新たな取引が生まれることがしばしばあります。またマスクで表情がよく見えなかったのがマスクを取ると表情が鮮明に見えるため、プレゼン能力が高い人がより力を発揮することでしょう。ウェブで事前に基本的な情報交換を済ませた上で、現場で現物を使ってリアルなプレゼンテーションをすることで、お客様の理解も進み受注を加速させることもできそうです。もしウェブでの商談に慣れてしまってリアルな仕事の腕が鈍っていたら、その場合はすぐに鍛え直しをすることです!

これまでほとんどできなかったリアルな展示会も盛んになるでしょう。マスクなしで自由に行き来ができるようになることで、展示会にも人が来てくれるようになると思います。展示を見ていただいてその場で即商談といったスピーディな仕事の進め方も実現したいものです。ウェブ展示会の経験があれば、そこで培ったノウハウも活用して、コロナの間に蓄積してきたアイデアを織り込んだ斬新な展示をしてライバルを出し抜く戦略を立てる時期だと思います。今までできなかったことをこのタイミングで一気に実行しましょう。

これまでは、コロナ禍での制約条件に収まる範囲内でベストを尽くすということが正解でした。制約条件がある時の方が仕事はシンプルでやりやすいのですが、創造的な仕事は困難だったと思います。これからはその制約が取れるので、これまでやりたくてもできなかった営業手法にチャレンジできることになります。自分たちで考える事が多いので大変ではありますが、易きに流されずここで頑張って大きなレベルアップを実現しましょう。

モノづくりの現場でもいろいろなことができそうです。これまでは人が一堂に会することができなかったので延期していたカイゼン発表会や勉強会も再開しましょう。この間にリスキリングといったこれまで聞かれなかった言葉も多く登場しています。この機会にこれらのことの実行を検討して従業員の方々の能力向上を実現するのです。

マスク着用義務がなくなることをきっかけに、制約条件下における管理的なアプローチから、制約がない自由な創造的なアプローチに変えましょう。これまで貯めて来たいろいろな技術やアピール項目を外に売り込む絶好のタイミングです。出遅れないようにスピーディな計画・判断を心掛けましょう!


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫