8月になりました。各地で花火大会や全国高校野球選手権甲子園大会のような大きなイベントが再開されています。コロナの動きはまだ予測がつきませんが、世界の潮流に倣って日本でも少しずつ規制が緩和されていく傾向なので、コロナ禍からの回復はスピードアップされていくと思います。
しかし3年前と比べると、同じイベントでも情報の出し方、予約の仕方、誘導の仕方など大きく変わっているでしょう。人手不足であるにもかかわらず、人と人との接触を減らし、お客様の待ち時間を短くするなど、これまで後回しにされていたもの、人がやればいいとされていたものが、テクノロジーの進歩や環境の変化によって実現していると思います。
この機会に、私たちのものづくりにもいろいろな変化を起こしたいものです。
そこで一つご提案をさせていただきます。夏休み前に、最近の世の中やマーケットの変化を振り返って、「これから会社がどう変わればいいか」といったテーマを皆さんでワイワイガヤガヤと話し合ってみるのです。「どう変えれば」ではなく、「どう変われば」です。夏休みを楽しく過ごして、思いっきりリラックスして・・・という過程で突然「どうすればそうなるか」のアイデアがひらめく可能性は高いと思います。そして工場に帰ってきたときに、そのアイデアを披露し合って会社を変えるというのはいかがでしょうか。
ベテランも若手も皆で、「これから会社がどう変わればいいか」を話し合うことですが、これを非常にうまくやっている会社があります。日本カイゼンプロジェクトの会員でゴム金型を作っている佐藤製型株式会社では、毎月1回午前11時から昼食が始まる12時まで全員でワイガヤ会を開きます。
そこでのルールは「人の意見を最後まで聞く」、「人の意見は全て肯定する」、「否定語禁止」の3つだけで、書記の人がみんなに見えるようにホワイトボードに出た意見をどんどん書いていく。以前はベテランの人が若い人の意見を「そんなことできるわけない!」と否定したこともあったそうですが、実際にやり続けるうちに、最初は無理と思ったことでもやってみるとできてしまうことが多くあると分かり、今はみんながルールを守ってワイワイガヤガヤをやっているとのことです。この間に30件くらいのアイデアが出て、残り10~15分になったら、実行する方法を思いついた人から実行案を言い合います。自分が問題提起したから自分が解決するわけではありません。すべて皆でやるのが原則です。ただ喋りっぱなしで終わることがないようにすることが大切だそうです。
そして最近のテーマは「やりたくない仕事、面倒だと思う仕事」でした。一人の新入社員がたくさんの基礎的な仕事を「面倒な仕事」と言ったそうです。以前なら、ベテランさんが「それは努力して覚えるしかないだろう!」と叱ってしまったかもしれませんが、今回は「そうか、基礎的な仕事でも新人には面倒なんだ!」と同意してくれた。そして翌日から昔からある基礎的な仕事を更に簡単にできるようにするカイゼンが始まったそうです。私もそれは効果抜群だろうなと思いました。それ以外にも出た意見を元にたくさんのカイゼンが実行できたとのことでした。
佐藤製型では以前から継続的にこのアイデア出しの会議を続けており、その結果、皆さんの心にゆとりができ、こんな基本的なところでもカイゼンができるチームになったのです。佐藤社長に伺うと、この会議は成果が大きい上に、運営は難しくなく誰にでもできるとおっしゃいます。もし うまく行かないとすれば、それはルールが守られていないからか、開催回数が少ないからで、練習すれば必ずうまくなるとのことでした。
夏休みを有意義に過ごすためにワイガヤの話し合いをしてみませんかとご提案いたしました。普段と違うリラックス状態の時に、頭の隅に残っていた課題が突然に答と共に思い浮かぶといったことがあるからです。しかし直前の一回の会議だけでは成果が出ないかもしれません。これを機会に皆さんで将来に向けてのカイゼンの話し合いを増やしていきませんか。普段から問題を出そう、変えよう、と考え続ける組織に変わります。
連日の猛暑ですが、コロナと熱中症に気を付けてお過ごしください。そして夏休みを楽しく安全に過ごしましょう!
日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫