5月のご挨拶

 5月になりました。先月入った新入社員の皆さんもそろそろ会社に慣れてくる頃でしょう。

しかし連休を過ごしている間に五月病になって会社を辞めたくなっている人もいるかもしれません。この頃の若い人たちは好きなこと以外には忍耐力がない、苦手と思うとすぐ辞めてしまう!と多くの年配の先輩たちが言っています。しかし今の若者と年配者とは育った環境が全く違います。考え方や物の見方にも当然のことながら大きな違いがあるはずです。

私は指導会や講演会の席で、鳥の眼、虫の眼、魚の眼の3つの眼を使って現場を見ましょうと言って来たのですが、最近4つ目としてコウモリの眼を加えました。これは目に見えないものを逆に見るという見方です。そこで私もコウモリの眼で今の若者のこういった動きを見てみようと思いました。今の若者がいったいナゼそう考えるのかということを、彼らの立場に立って我々を見るとどうなるのかといった逆の見方をしてみることによって、彼らの考え方を理解できるかもしれないと思ったからです。

最初にアメリカで起きていることから考えてみようと思います。アメリカで起きていることが少し遅れて日本でも起きることが多いからです。5年ほど前の事ですが、アメリカのEvernoteというITの会社に行く機会がありました。そこにいる社員の人たちとの交流を通じて、多くのことを学びました。彼らは日本と比較するとかなり頻繁に転職しますがそれについて聞いてみました。彼らはいろいろな外部の会社の人たちと個人的にSNSでつながっており、どの会社がどのような人材をどのような給料で探しているかということを常に情報交換しています。そして今より少しでも自分が望むことに近い職場があれば躊躇なく転職するそうです。この時話した人は日本のことをよく知っていたのですが、彼によると今の会社から別の会社への転職は、日本の社内の人事異動のような感覚だとのことでした。すなわちシリコンバレーという大きな会社内での人事異動のような感覚なのだそうです。

日本でも今の若い人たちはSNSで情報交換をしており、社内の上下関係よりも社会の横の関係の方が緊密といった位置づけでもあるようです。今の若者には年功序列や終身雇用といった考え方はありません。ですから彼らにとっては会社の今が魅力的であることが大切なのです。

例えば彼らに対する作業指導で、きちんと準備しないでいい加減な教え方をするとか、逆に昔の様に厳しく鍛えるとかといったやり方は危険です。しかし教え方はもちろんのこと、何のためにこの仕事があり、どうやったらうまくできるか、そしてできるようになったらどうなるかなどをきちんと準備をして伝えることができたら彼らは納得しヤル気を出します。そしてまとめてではなくて頻繁にちょびちょびと褒める事が喜ばれます。アメリカでも全く同じです。

それと、私が新人であった頃(50年くらい前)を思い出してみると、当時はかなり理不尽なことがありました。しかし、いくら理不尽であってもそれを受け入れるのが社会人になる第一歩という雰囲気があり、慣れる努力をした覚えがあります。周りがみんなそうだったので疑わずに頑張りました。しかし今の判断基準であれば、パワハラでありモラハラであり、アルハラでした。私はすべて嫌でしたが、拒否するということは思いつかず、そのまま順応することをしました。要は昔のやり方には当時から疑問を持っていたということで、逆にいうと若い人が飲み会や旅行などに行きたくないという気持ちもよく分かります。

今の若い人たちは理不尽を我慢しません。それを忍耐力がないと批判する年配者もいますが、そもそも忍耐させる必要があることなのかどうかをこのタイミングで考える必要があるかもしれません。

この仕事が好き、社長が尊敬できる、何のための仕事かをしっかり説明してもらい納得した、などが彼らをして仕事に向かわせる秘訣のようです。特別のことではないですね。

コウモリの眼という見方は私にとっては新しいですがかなり意味のある見方だと思いました。この時期にいろいろとお試しになってはいかがでしょうか。



日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫