11月のご挨拶

 11月になり急に朝晩の冷え込みが気になるようになりました。つい先日まで猛暑の連続という感じで過ごしていましたので、気候の急な変化で体調を崩さないよう寝具や服装の調整に注意が必要ですね。

10月から緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が全都道府県で解除されました。私も少しずつですが移動をすることが増えていますし、週末の繁華街も人出を取り戻しているようです。これで停滞していた経済が回り始める!という期待をする反面、もしまたコロナが勢いを取り戻したらどうしよう…という不安もあり、私の心はまだ落ち着かない状態です。

これまでのところ、人流が増えているにもかかわらず、首都圏のコロナ感染者数の推移を見るとかなり大規模な減少となっています(10月30日現在)。ワクチン接種の広がりやマスク着用マナーの定着など、ある程度の根拠はあるのですが、やはり心配な気持ちが拭えないのです。

新型コロナウィルスの発見から振り返ってみると、私はそこにカイゼンとの共通点があることに気づきました。コロナウィルスは目で見ることはできませんので、もし目に見えたら対応はかなり楽であったと感じていましたが、毎日のニュースで1日の感染者数、重症患者数、県別の感染者数など数値化されているものもあることに気づきました。これはあくまで検査をした方のみの数字ですので正確な数字とは言い切れませんが、体調に異変を感じ病院に行った方の検査結果の数字ですので相関性のある数字だと言えるかと思います。

この数字が増えると、緊急事態宣言を発令し、それだけでは効果がないと分かると飲食店に時短要請を出し、さらにはアルコールの提供禁止と再発防止に取り組む国の姿勢を何度も目の当たりにしてきました。しかしながら、数字が下がってくると国の要請に協力しない人が増加するという再発防止の欠点ともいえることの発見もありました。

そう考えると、「見えないことがある」ことは極めて危険なことであることを今回のコロナは教えてくれました。

モノづくりの現場に見えないモノやことは少なからずあるはずです。しかし「何が見えていないか?」は即答が難しい質問です。見えないことがある事実に気付かず失敗し、そこで初めてその問題の存在に気が付くというのが普通です。だから問題解決の手段のほとんどが再発防止になります。しかしもし、「何が見えていないか?」を少しでも知ることができて事前に対応すれば、それは未然防止の対応になります。

先ほどお話ししましたコロナウィルスの話では「未然防止はできていないのではないか?」と考える方も多いと思いますが、「見えていないけれども最悪の事態は避けよう」という姿勢は今回のワクチン接種率から感じることができました。今現在2回の接種を済ませた国民は70%を超えています。ワクチンへの取り組みで海外に出遅れた点、ワクチンの予約方法問題、ワクチン不足の問題などもありましたが、「すぐに接種しよう」と考える方が多かったのは未然防止の第一歩のようにも感じました。

再発防止と未然防止という安全や品質の問題に対する二つのアプローチを書きましたが、この二つは似て非なるものです。全く別物といってもいいでしょう。この頃は商品が共通モジュールで構成されるモジュラー化傾向にあり、一旦間違いが起きるとその影響が以前とは比べ物にならないくらい大きくなっています。そうすると再発防止というアプローチのみではこの先の未来に不安を感じます。しかし、再発防止の中に未然防止のヒントはあるのではないかと私は思っています。

起きてしまった問題に対応する再発防止よりも、問題が起きないようにする未然防止の方が問題解決レベルは圧倒的に高いです。未然防止はすぐにできるものではありません。この機会に見えていないモノを皆で探して、問題が起きる前に対策をする未然防止に結び付けましょう!


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫