7月のご挨拶

 7月はオリンピック開催の月です。直前になってもいろいろな議論が飛び交っていますので、何とも落ち着かない状態ですが、それはさておき、オリンピック・パラリンピック(以降オリパラ)後に私たち製造業の身の回りにどのようなことが起き、そしてそれがどういう形で私たちに影響を及ぼすのだろうかということを考える時であると思います。良くも悪くもオリパラ終了は経済に大きな影響を与えることが確実だからです。

唐突ですが、50年以上も前の大学受験時のことを思い出しました。試験に受かれば大学生になり、落ちたら就職するか予備校に行くという時期でした。高校生活継続の選択肢はなく、どちらの道に進んでも高校生活とは全く違う生活になります。私はこの時、大学に行ったらこういうことをしたいというバラ色の夢を描くと同時に、もし落ちたらどうするかという結構現実的なことも考えていました。

結局私は試験に受からず、予備校に行き受験勉強に専念することになりました。しかし、前もって起き得るすべてのことを予想して心の準備をしたことは私にとって大変に有益でありました。ことが起きた瞬間にスタートを切ることができたからです。

オリパラ終了後にはたくさんの変化が起きるのではないでしょうか。例えばオリパラ開催のためにいろいろなことが行われたり、止められてきています。そしてそれらのすべてがオリパラ終了と同時に変わり始めます。

まず、オリパラ開催に向けて抑えられてきたことをあげると、例えば、東京ビッグサイトでの展示会はオリパラ開催準備のため制限されていましたが、終わればまた元のように使えるようになるでしょう。そうだとしたときにしばらく休止していたリアルの展示会をどうするかについて考える必要があります。元に戻すのか、このままウェブ展示を続けるのか、あるいはその両方を使うハイブリッドにするのかなどなどです。しばらく様子を見てから考えるのではなく、事前に予想をして思考を巡らしてみましょう。これを機に真に有効な展示方法をご自身で見つけていただきたいと思います。

次に開催中に起きる各種制限についても考える必要がありそうです。大会期間中の首都高の料金は6時から22時は1000円上乗せになります(0時から4時は半額)。加えていろいろな交通規制が実行されますから期間中の交通は大混雑と確実なコストアップになりそうです。この間の物流をどうするか…、ただ対応策を考えるだけではなく、いろいろなカイゼン策を考えて織り込むことができたらいいですね。例えば共同運送など、理論としてはあったけれどなかなか実現しなかったことをこの際実行できませんか。

街では飲食店を中心に開店時間が制限されています。ちょっと前にはプレミアムフライデーなどといって賑やかだった街が静まり返っています。しかしワクチンが効いて蔓延の恐れがなくなればあっという間に元に戻るでしょうし、逆にオリンピックの訪日外国人からインド株のような強烈な新型ウィルスが大量に持ち込まれ、再び感染爆発が起きればまた自粛の日々に戻るでしょう。緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などもオリンピック開催のために取られてきたという面もあると思います。そうであると終了後はどうなっていくのでしょうか。

あるいは、海外では一足先に経済の回復を見込んでいる国が出てきています。日本にもその影響が来て突然忙しくなることもあると思います。もしそうなった時に生産能力は大丈夫ですか?今のうちに場所を空けたり加工スピードを上げたり従業員訓練をしておく必要がありませんか。

このようなことがたくさんあってその一つ一つが私たちに何らかの影響を与えるでしょう。既にどうなるかが分かっていることもあれば、その時になってみなければ分からないこともたくさんあります。

私たち製造業に何が起き、そしてそれをどう捌くか…、考えましょう、思考停止にならずいろいろなチャレンジをいたしましょう。何が何でもピンチはチャンスに持ち込みたいものです。チャンスの女神は前髪フサフサですが、後ろはツルツルです。来た時に手を伸ばして掴まないと通り過ぎようとしてからは掴めません。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫