6.強いモノづくり【急所77】シンプルなモノづくり

工場内には日々、たくさんの情報が流れています。生産計画や仕事の割り振り、段取り替え予定、配送計画、入荷計画など実に様々な情報です。しかしこれらのいろいろな情報も元をたどると、「注文情報」ただ一つです。

注文情報以外のすべての情報は、注文から派生した情報であることが分かります。作業の都合上から情報を細分化していますが、たくさんの人で作業を手分けしてしまうとあらゆることが複雑になり遅くなります。逆に注文情報を中心に可能な限りシンプルに情報が流れるようにするとスピードが上がりミスも減るのではないでしょうか。

精密鍛造で自動車部品を作っているE社では、生産管理の人たちが翌日の生産計画を作るために前日の夜遅くまで仕事をしていました。しかし現場でその計画がどのように使われているかを見てみると、前日生産管理の人たちが作った計画通りにはやっていません。理由を聞くと予定通り材料が入ってこなかったり、突発の注文が入ったり、担当者がお休みしたりといったことに対応する必要があるから…ということでした。あるいは段取り替えを減らすために順番を変えるということもしていました。すなわち計画の中で確実に使われているのは生産数と納期だけで後の情報は必ずしも使われていなかったのです。そして管理の人たちでは到底分かりえない現場の経験からくるノウハウが生かされた作り方をしていたということです。

そこで生産管理の人たちは、求められる製品情報として数量と締め切り時間のみを示し、作るのに必要な材料を用意するということにして後は生産現場の判断に任せるやり方に変えました。極端に言うと、営業からの注文情報をそのまま現場に渡してみたという感じです。その結果ですが、全く問題は起きませんでした。むしろ現場判断の自由度を高めたことで生産効率は上がったと聞きました。しかし何よりよかったのは生産計画を作っていたスタッフの人たちは毎晩遅くまで残業をして仕事をこなしていたのですが、定時で終えられるようになったのです。

営業からの注文情報を。生産現場にも購買にも配送にも、直接に伝わるようにすると実にシンプルになりますね。生産計画の立案をやめて、注文情報をそのまま現場に流しても商品が作れるということはあるのです。

今週の言葉  いろいろな情報も、元をたどれば注文情報ただ一つである。