プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第21回

プロジェクトの名称をわかりやすくする

前回は、「名前をつけよう」というタイトルで言語化スキルの重要性を述べるとともに、「フレックス法」や「シンクロ法」などの由来を紹介しました。フレックス法は、進ちょく状況を見ながら赤信号のプロジェクトに他のプロジェクトから応援要員をフレキシブルに移動させることでした。また、シンクロ法はキーパースンがボトルネックになっているとき、他のメンバーはキーパースンに同期(シンクロ)してスケジュールを組むやり方を示していました。社内プロジェクトに限らずどのようなプロジェクトであれ、まずプロジェクトの名称を聞いただけで「何をやるプロジェクトなのか」がすぐにわかることが欠かせません。また、コロナ禍によるテレワークの進展に伴い言語化スキルはさらに重要になってきます。今回は、言語化スキルの観点からプロジェクトの名称について延べることにします。

【1】建屋増築無しにラインを増設したプロジェクトの例
まずは、本連載第2回で紹介した事例です。建屋を増築せずに生産ラインを増設する事例がありました。
図1は増設前で、現状3本のラインを示しています。図2は増設後です。現在のラインをすべて短縮化して空きスペースを稼ぎだしました。
                


どういうプロジェクト名称がよいでしょうか。「生産ライン増設プロジェクト」や「生産ライン4本化プロジェクト」などがすぐに思いつきますね。これにどんなやり方でそうするのか、例えば「全ライン短縮化による」などを追加すると、関係者でなくてもプロジェクト名称を聞いただけでイメージがわいてきます。たんに「生産ライン増設」とせず、「生産能力増強」とすることも考えられます。このプロジェクトにどのような意味をもたせるかによって名称は変ります。例えば、「全ライン短縮化による生産能力増強プロジェクト」も一案となります。


【2】拠点別に収益を管理するプロジェクトの例
これは筆者が直接担当した失敗例のひとつです。自動車会社で財務部に所属していたとき、開発担当役員から「社内で生産しているユニットや部品の収益性を生産拠点ごとに測ることはできないか」という問いかけがありました。ここでユニットとは社内用語で、単なる部品ではなくエンジンなど大きなまとまりのある製品を指していました。
当然のことながら、それらの製造原価は把握されていました。しかし、価格競争力や生産拠点の収益性などを測る仕組みはありませんでした。「測れないものは進歩しない」、これは役員から聞いた言葉でした。確かにその通りでした。企業全体の収益性は毎年の報告書でわかるものの、生産拠点別などの収益性を比較検討できる全社的に共通する指標はありませんでした。工場トップによっては、工場運営についてたん予算を守ればよいということでなく、さらに付加価値のあるものを取り込んで生産すべきではないか、という見解をもつ方もありました。
「生産拠点別 収益管理システム」というプロジェクト名でスタートしましたが、結局、「立ち消えプロジェクト」になりました。今になってこうすれば良かったと思うのは、工場を事業部とみなして「事業部別 収益管理見える化」プロジェクトとすればよかったと考えています。

プロジェクトの名称はたいせつです。たんにメンバーにとってだけでなく、プロジェクトが期待している役割を果たすときのすべての関係者にとって理解しやすいことが欠かせません。