プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第178回

プロジェクトチームの休憩室(26)

連載の前回は、その前回(第176回)から引き続き筆者の出身地である鹿児島について述べました。当地出身の偉人として西郷隆盛を取り上げましたが、このような有名な偉人だけでなく、若き薩摩の群像を紹介しました。これは当時の徳川幕府によってまだ海外渡航が禁止されていた時代に、密かに薩摩藩は英国に留学生たちを送り込んだ史実を基にしたものでした。このモニュメントは昭和57年に制作されたそうですから「鹿児島は西郷だけでは無い」といったメッセージを感じることができます。そして、薩摩藩は英国との紛争から圧倒的な彼我の差を知ることになりました。ここから「他から学ぶ謙虚な姿勢」があったことを述べました。時代や地域などの環境はさまざまであっても、このような姿勢はつねに必須のものであることを述べました。今回はこの続きとして、細かいことにも手を抜かず地道に社会システムを作り上げる現在のわが国の取り組みを述べることにします。


ぶんべつとふんべつ
筆者は横浜市にある大きな団地に居住しています。家庭ごみの収集のために必要なごみの分別(ぶんべつ)はさほど複雑ではありません。いぜんにTV番組で紹介していたわが国のある自治体では20種類以上に分別する必要があるということでした。外国人でなくてもこの精密さには驚きます。たぶん、このようなごみ分別は(20種類でなくても)わが国以外では見られないように思われます。例えば、スペインのマドリッドでは大きなコンテナーで収集していましたが、2種類しか無かったようです。ちなみに、ごみは分別(ぶんべつ)するものですが、これを「ふんべつ」と読めば別の意味になります。「あの人は分別のあるりっぱな人物だ」と言えば、その人がものごとの善悪や道理をきちんと判断できることを意味します。ごみの出し方とりっぱな人物、いずれにも「分別」が関わってくる。ほんとうに日本の特徴を的確に表現しているな~と感じます。

ごみの出し方
わが国のどのような自治体にもホームページなどでごみの出し方が説明されています。項目として、まずはごみ・リサイクルがあります。続いて、ごみと資源の分け方・出し方、横浜市で収集するもの、粗大ごみ・・と続きます。日常的な家庭ごみの収集の他に、さまざまな対応が詳しく説明されています。定期的に収集されるものとは異なり、いわゆる粗大ごみなどは、電話やメールで申し込み、必要な処理費できちんと引き取ってもらえます。これらは寝具や家具などが対象になります。家電製品となると、定期的な収集とは別の仕組みになります。今回、筆者が体験したごみ処理について述べます。

テレビなどの家電製品
これは最寄りの家電製品販売店が窓口になっていました。使わなくなった古いテレビを持ち込みました。若干の処理費で引き取ってもらいました。自分で持参できる程度のものであれば、最寄りの家電製品販売店で持ち込めばそれで処理は完了です。

パソコン
これは独自のプロセスがありました。ネットで申し込むと処理伝票が送付されてきました。自分で梱包して郵便局に持ち込めばそれで完了です。

電子レンジ
これは対応する処理費用の証紙をコンビニで購入しました。指定された処理センター(自己搬入ヤード)まで自分で持ち込むことになります。ヤードは市内に4か所あり、クルマに積んで自宅から30分ほどのところに持ち込みました。ここでリサイクルできるものなどを選別するようでした。

それぞれの対応ルーティン
いずれの場合でも明確に対応のルーティンが決まっており、てきぱきと進行しました。とくに、かねて持ちなれない筆者の動作を見て、係員が自らクルマから取り出すなどの配慮もありました。これらの対応は事務的を超えて親切で丁寧な対応を感じました。ホームページには、高齢者や障害のある方などを対象に自分で持ち出すことができない人のために、自宅まで出張しての「持ち出し収集」もあると書かれていました。たいへんに行き届いた仕組みになっていると感じました。

自治体としての市民向けサービスの評価
ごみ収集という観点から、筆者は横浜市のごみ収集については高いレベルにあると考えます。もちろん、他の自治体と比較したわけではありません。あくまで、筆者の感覚的なものです。しかし、このレベルになるまでには様ざまな努力や工夫があったのでしょう。一朝一夕に、このようなレベルには到達しないでしょう。筆者のこのような評価には、もうひとつの経験があります。次にそれを述べます。

コロナ禍の際、各自治体ではワクチン接種にどう対応するか明暗がありました。横浜市は、第1回目の接種ではかなり混乱していました。電話はつながらないし、ネットでの申し込みシステムもうまく作動しませんでした。筆者は横浜市での接種はあきらめて、自衛隊による接種を受けるため大手町会場(東京都)まで出かけました。横浜市の対応は明らかに後手に回っていました。ところが、2~3回目以降になると円滑な対応に大きく変化しました。

横浜市の人口は300万人を超えます。わが国の市区町村のレベルで最大規模の都市になります(2位:大阪市、3位:名古屋市)。ワクチン接種の初期対応では遅れをとりましたが、その後はすっきりしました。筆者は最寄りの診療所でかんたんに予約できました。コロナ初期の対応とは格段の進化がありました。

大規模都市ゆえに新規状況の対応には遅れをとるかもしれないが、その後は大規模都市にも関わらず高いレベルに到達する。二つの経験からの筆者の結論です。