【1】はじめてのおつかい
これは良く知られている30年以上も続いている人気テレビ番組のタイトルです。幼い子どもが初めておつかいに出かけます。それをテレビ局のスタッフがおつかいの子どもにわからないように一部始終を撮影します。笑いや涙あり、ハプニングもあって長期にわたって多くの視聴者の支持を得ています。また、海外でも放映されているそうです。海外にはこのように幼い子どもだけでおつかいができる社会的な環境は無いようです。それでも放映されているのはわが国独自の文化として興味深く受けとめられているからでしょう。そして、その背景にあるわが国社会の安全なことも、同時に認識されているのでしょう。
【2】おつかいはプロジェクトそのもの
おつかいで任されることとして、次のようなことがあります。まずは「何を買うのか」ですね。買うモノは何と何で、数量や価格はどのくらいか。それはどこで売っているか、つまり八百屋か薬局かなどお店の種類もあります。そしてそのお店の所在地はどこか、自宅からお店までの道順などを知ることも必要になります。買うモノの数量や価格から必要となる所持金も持参することになります。プロジェクトの三つの要素として、成果物・納期・予算などがあります。「はじめてのおつかい」をプロジェクトとしてこの三つの要素について説明すると次のようになるでしょう。
プロジェクトの三要素
・成果物(買うモノ) 何を、そしてどのくらいの数量を買うか
・納期(かかる時間) お店への往復にどのくらいの時間がかかる
・予算(準備するおカネ) 預かった所持金はいくらか、お釣りはどうなるか
【3】仕事の進め方の基本を伝える
子どものおつかいと我われおとなの仕事も、その基本、つまり仕事の正しい進め方は共通していると言ってよいでしょう。とくに新入社員などの新人に対しては、手を抜かずにきちんと仕事の進め方を伝えていくことが必要になります。教える側がベテランの場合、自分が現在おこなっている手慣れたやり方をそのまま伝えることになりがちです。このやり方は、たぶん仕事のポイントをついていてベテランには「きわめて実践的」と感じられるのでしょう。しかし、新人がそのやり方をどのように受けとめるかはかなりの個人差があると考えられます。やはり、まずは基本的なところを踏まえて伝えることが欠かせません。
【4】仕事の進め方の基本はプロジェクトにある
プロジェクトの三つの要素として、成果物・納期・予算などがあることを「おつかい」を例にして述べました。さらに企業内の実際の仕事、筆者が上司から指示されたことを述べてみます。あるとき、上司の部長から「設計現場のカイゼン事例をいくつか知りたい」との指示がありました。我われが所属していた部署は財務部門に所属しており、社長直轄の全社横断的な位置づけにありました。公平な観点からトップに報告する役割がとくに重要でした。ここで筆者は部長の指示を「わかりました」と引き受けてそのまますぐに自席に戻ろうとしました。ここで部長から「ちょっと待て、どういうふうにまとめるつもりか」、今ここでそれを説明してほしいということでした。
部長としては、筆者に指示した仕事の目的とその納期を確認したかったのですね。これは仕事を任された筆者がその場で約束すべきなのに全く気がつかなかったのです!この場合、三要素の成果物・納期が重要ポイントです(予算、つまり筆者の作業時間はとくに問題になりません)。成果物では、とくに報告の目的がカギになります。納期については部長の要望があるはずなのにまだ尋ねてもいませんでした。仕事の進め方の基本(プロジェクトの三要素)をまるで認識していなかったのです。筆者の仕事が的ハズレにならないように「ちょっと待て」に続く部長のコメントは今でも忘れることができません。