プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第9回

成功のための3つのカギ 目的~最終成果物~見える化

前回は良いプロジェクトにするための入口とは何か、そして最終成果物が目的に対して的外れでないかをチェックすることなどを述べました。その前回には「出口戦略とは何か」を述べましたが、それは入口の時点でプロジェクトと意識しなかったが、最終的にはやはりプロジェクトそのものになりました。つまり、プロジェクトの出口には、必ず目的にぴったりの最終成果物がある、そして入口から出口までプロジェクトの全体像を見える化することが欠かせない。こういうことをこれまで繰り返し説明してきました。
繰り返し強調してきたことには、それなりに特別な理由があります。
プロジェクトをどう企画・運営するかその体系は「プロジェクトマネジメント(PM)」と呼ばれています。プラント建設、海底トンネル工事などのプロジェクトにおいて、発注者と請負者間で完全な共通言語として通用するようプロジェクトマネジメントの体系化が進みました。同じプロジェクトという名称でも、このような企業間で取引されるものと同一企業内の、つまり社内プロジェクトでは必然的に異なる部分があります。
それは、発注者と請負者の役割です。企業間のプロジェクトではそれぞれの役割が契約で明確に区分されます。例えば、発注者が要求しなかったことは、当然のことながら最終成果物には含まれません。従って、発注者の要求は詳細に記述された文書で明示します。社内プロジェクトでは、これがシンプルであいまいなことがしばしばあります。社内の発注者(例えば社長)のひと声だけでプロジェクトを開始することもあります。こういうときは、もちろん、発注者の詳細な要求文書などはありません。プロジェクトチームがその役割を担うことになります。ここが企業間のプロジェクトと比較した場合、最も異なる点となります。
 
比較表 社内プロジェクトと企業間プロジェクト

 
プロジェクト立ち上げに際して、まずやるべき重要なこととして「発注者の役割」である目的、最終成果物、全体像の見える化であることがご理解いただけると思います。
社内プロジェクトは限られたメンバーでやることが最大の制約になります。そこで、社内プロジェクトの一般的な注意点、初めてプロジェクトに取り組む場合の注意点などを書いておきます。
 
①社内の完全な承認を取り付ける
ほとんどの社内プロジェクトでは、リーダーを含め本来業務との掛け持ちになります。全ての要員について、プロジェクト活動に専念できる時間保証が欠かせません。プロジェクトの規模にもよりますが、リーダーは週2日、メンバーは週1日(全員同じ日)などと指示します。メンバーの所属部署ではメンバーへのバックアップも必要になります。時間内とはいえ、特別な業務を担当するので「プロジェクト手当て」なども必要となるでしょう。
 
②同じ人物が二つ以上のプロジェクトに参加することがないようにする
人選やプロジェクト期間を調整し、同じ人物が、本来業務の他に二つの異なる業務は無いようにします。 ③短期のプロジェクトをまずやってみる 難しそうな課題の場合は、「調査プロジェクト」のような位置づけで短期のプロジェクトをやるとよいでしょう。そのプロジェクトの結果を踏まえ、あらためて主題となるプロジェクトを立ち上げることになります。
 
④初めてプロジェクトに取り組む場合は最終成果物を絞り込む
 
⑤プロジェクト期間中、専用で使えるスペース(会議室など)があると理想的
 
社内プロジェクトの特長は、何と言ってもその機動性です。必要なときにすぐやることができます。そのためには、本稿の主題、「目的~最終成果物~見える化」を踏まえて社内プロジェクトに習熟することが基本となります。社内プロジェクトに習熟すれば、社外のコンサルタントを含めた社内プロジェクトや他企業との合同プロジェクトなども効果的に運営することができるようになることでしょう。

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