プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第8回

良いプロジェクトにするための入口とは

前回は、コロナ感染症対策として現状を安全に収束させるための「出口戦略とは何か」を取り上げました。出口戦略とはプロジェクト計画そのものであること、但し、どの時点でプロジェクトを計画するか、そのタイミングが異なるのが出口戦略でした。出口の反対側、つまり入口の時点では何かを計画すべきだという認識ができなかったプロジェクトが「出口計画」でした。
 
では、プロジェクトの入口とは何でしょうか。感染症の蔓延といった危機的状況ではなく、通常のプロジェクトの入口では何が必要なのでしょうか? 本連載(第5回)で「スケジュールを立てる前にやるべき必須のこと」をとり上げました。ここで、よくある誤りを紹介しました。それは「プロジェクトをやるぞ!さあスケジュールをつくろう」でした。 プロジェクトの入口はスケジュール作成ではなく、プロジェクトにかける「熱い思いを語ること」でした。そして思いを文章化し、さらに全体像を見える化する「サクセスマップ」というやり方を紹介しました。
 


 
少し寄り道になりますが、「ロードマップ」について。 スケジュール表の形式としては「ロードマップ」や「ガントチャート」がよく使われると説明しましたが、最近の感染症対策では「ロードマップ」が使われています。プロジェクトでは普通に使われる言葉ですが、一般的には誤解されそうなので、ここで説明しておくことにします。 ロードマップをroad mapとして直訳すると、道路地図になります。しかし、プロジェクトでは「工程表」を意味します。工程表=スケジュール表です。我われがドライブで使う道路地図とは異なるものです。工程表とは、目標達成までにやるべきことの全体像をスケジュールで示したものになります。マップと聞くと地図をイメージしますが、ロードマップは工程表であって地図ではありません。
 


 
全体像を見える化するサクセスマップは文字どおり「マップ」ですから、関係者なら直感的に わかりやすいという特長があることをたびたび述べてきました。プロジェクト成功のためにきわめて重要なことは、全体像を関係者で共有することでした。そして、全体像を共有できるこのマップの前段階がプロジェクトの入口になります。  
ここで、プロジェクト計画の入口を図で示します。熱い思いを語ることからサクセスマップに至るまでを三つの手順を図示しました。
 
図 プロジェクト計画の入口 「思い」を「サクセスマップ」にする手順
 
ここで、今まで説明を省略してきたものがあります。それは手順の2.最終成果物のチェックです。最終成果物が目的に合致しているか、的外れでないかをチェックします。考えるまでも無く自明の場合は省略できます。しかし、自明だと言い切れないときはチェックします。例えば、次のような事例です。
目的と目標を取り違えていないか・・
職場の省エネ活動で休憩時間は空調や照明をオフにする例があります。開発や設計の職場では、ちょうど佳境になったときに職場の環境が突然悪化します。「あともう少しやりたいのに」という環境が台無しになります。電気料金節約よりも開発設計の作業中断損失のほうがはるかに大きいと思われます。快適な職場環境の目的は生産性向上です。省エネ活動の目標はこの目的を超えるものではないはずです。職場の実態に合わせた弾力的な運用が必要です。
手段が目的になっていないか・・
営業部員には毎日の業務報告の仕事があります。業務報告は何らかの手段であるはずです。例えば、報告率が低いのでそれを上げようというプロジェクトがあるとしたら、それは営業部門の目的に合致するかどうかをチェックすることが欠かせません。

プロジェクトの入口で最終の成果物の設定を間違えると、プロジェクト活動がうまく進んだとしても成功には結びつきません。このような入口でのチェックが無かったために大きな損失を生むことは、企業活動だけでなく社会全体に見受けられます。プロジェクトの知識と経験は、少なくとも企業内でのこのような損失を防止することができます。

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