プロジェクトはこんなときに効果的! 前回は、最終的な姿や成否がわかりにくいとき、つまり設備やハコモノなど有形の成果物ではなく「最終的な成果物が無形のものである」ときはプロジェクト方式を採用する重要な判断ポイントであると説明しました。
例えば、多様な働き方に対応し現有人材をパワーアップしたいので「社内人材の発掘と開発プロジェクト」に取り組みたいとします。最終的な成果物は、その人物の得意技や隠れた資質について、磨き上げることや発掘すること、つまり「人材スキルの成長や発展」といったことになるでしょう。人そのものは有形ですが、「人材」や「スキル」などは無形です。そしてそれらを発揮してもらうこと、つまり「適材適所」を実現しないことにはその取り組みには意味がありません。
こういうときには、いきなり「さあ、プロジェクトをやるぞ!スケジュールをつくろう」というわけにはいきません。プロジェクトと聞いた瞬間から「スケジュールをつくろう」はよくある大きな誤りです。ですが、こういう傾向は無理が無いという面もあります。というのは、プロジェクト業界では「ロードマップ」や「ガントチャート」などスケジュール関連の言葉がよく使われているからです。
何にせよ、スケジュールを立てる前にやるべき必須のことがあります。これをしっかりやらないと、プロジェクトを立ち上げても暗礁に乗り上げたり、迷走したりする可能性が高い・・。
やるべき必須のこと、それは熱い思いを語ること。
そして、それを文章にすることです。書いたものがプロジェクトの憲法のようなものになります。
筆者はこれをプロジェクトの「背景文」と名づけています。なぜ、そのプロジェクトが必要か、その背景や思いを伝える文章ということになります。背景文には、どうしてもそれをやりたいという人がいて関係者を説得できるほどの思いが込められている必要があります。例えば、社長のもつ熱い思いがあったとしても「そうか、それならやろう」と関係者が感じる説得力が必要です。文章は500字程度ですから社長が自分で書いてもよいし、プロジェクトリーダーが聞き取り役になって文章にするのもよいでしょう。その場合は「社長はこんなふうに考えていたのか、知らなかった!」という発見もありますから、聞き取り→文章化というプロセスはとても効果的なコミュニケーションの機会になります。
この「背景文」と似たものに一般的には「企画書」があります。企画書は、その組織でよくあるイベントについて効率的な提案ができるよう定型化されたものと言えるでしょう。プロジェクトがその組織でよくある取り組み方であったとしても、目指す最終的な成果物が無形のものであるとき、または初めてのイベントになるときなどは、定型化された企画書よりもまず「背景文」で狙いを説明することをお勧めします。組織のルールで企画書が必要なときは、あとで提出すればよいでしょう。
ところで、背景文だけでは狙いは理解できたとしてもプロジェクトの全体像がどうなるか、つまり「全体像の見える化」はできません。関係者で全体像の見える化ができることはプロジェクトの成功に絶大な威力を発揮します。この見える化については、次回、「サクセスマップ」という見える化のツールをご紹介することにします。
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