新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第20回

ヨーロッパはメニューを見ても何が出てくるかわからない

● ヨーロッパはメニューが文字だけで、どんな料理が出てくるかわかりません
 ヨーロッパのレストランのメニューは文字だけであり、何が出てくるかは想像する必要があります。おもむろにメニューを開くと、一切のイラストも写真もないのが一般的です。日本でいうなら短歌のように短い文章が、2行程度に書かれています。
 肉は、豚、牛、ジビエ(猪、鹿、ウサギ)の区分がありますが、魚になるととたんに簡素化されます。白身か赤身、海か川かの違いくらいです。白身魚は、ヒラメ(舌ビラメ)、オヒョウ(ヒラメの巨大な魚で1から2mもあります)、スズキといった大味なものばかりで、赤身と言えばサケです。ほとんどのコックに訊ねても、魚に関しては余り種類を区分できないようです。
 その点日本のファーストフード店やドライブインでは、指でカウンターの大きな写真に指で刺して注文することができ、目で見る管理が行き届いています。日本は四季が豊かで海で囲まれている環境は、極めて世界では珍しい国です。大いに魚料理を堪能しましょう。
 メニューを広げて、まず通訳に訳してもらいながら内容を具体的に訊ねても、彼らも想像がつかないくらい怪しげな記述があります。個人での旅行では、余程語学が達者でないと美味しい料理はありつけないと思います。団体旅行が良いといえば、そうではありません。
 以前にツアーで多くの人と一緒について欧州を回ったことがありますが、レストランの料理は団体専用の本当にカス料理のようです。隔離された部屋で、一般客とは別メニューの粗末なものが、機械的に提供されたことがありました。団体のツアーは有名なところに行っただけの旅行としては良いものの、そこで提供される料理は“名物に美味いものなし”でした。
 美味しいものは、しっかりしたガイドブックや口コミ情報をしっかり勉強してから行くべきです。ヨーロッパの旅行は、仕事以外でも通訳を雇って、事前に美味しいところを見つけてもらっています。現地の十分な会話ができないならば、できる人を雇えばよいのです。ケチケチしないで楽しい旅行にするためにも、少々お金がかかりますが失敗や後悔はほとんどありません。
 最近はSNSなどで、事前に調べることができるので便利になりました。こちらの希望を聞いてもらいながら、納得できるまで準備をしていきます。行くまでの準備にあれこれ考えること、行って楽しむこと、さらに帰ってから思い出として楽しむこと、この3つを楽しめるようにしています。海外旅行は格安もありますが、せっかく時間と命を使っていくので、素敵な旅になるようにしたいものです。

● 日本ではメニューを見れば何が出てくるかわかります
 日本では、若い人がブランド品を持ってステイタスを感じているようですが、ヨーロッパはそうではありません。それなりのご婦人が、それなりのファッションやブランド品を身に付けるようにしています。ブランド品を身に付けていると、それにふさわしい車に乗ったり、かなり厚めの化粧もされています。見るからにステイタスが感じ取れます。
 ヨーロッパは、大変な寿司ブームです。ヘルシーさもありますが、箸を使うことも一種のステイタスを感じているようです。デュッセルドルフ市内の目抜き通りのインマーマン通りは、日本人の努めている企業が多々あり、その周辺には日本料理店も数多くあります。中にはミシュランの1つ星の店もあります。流行っているのは、回転寿司や寿司の注文をタブレットで頼む店です。回転寿司は見てから欲しいもの取ればよく、タブレットで見て頼むので間違いがないのが良いのだと思います。やはり目で見る管理は、間違いなく安心できます。
 これらの店には、日本人の客は皆無です。なぜだと思いますか?不味い寿司だと知っていますから行かないのです。理由は、日本人の板さんではなく韓国人や中国人、ベトナム人という人たちがやっているからです。駅ナカの寿司屋は、まったく酢のはいっていない寿司のシャリだったと通訳が教えてくれました。もう二度と行かないと憤慨していましたが、食べ物の恨みは根深いものです。
 ヨーロッパ人を日本に連れて、各企業を見学するツアーのガイドを何度もコーディネートしてきました。彼らが喜ぶのは、カラオケと居酒屋、京都や奈良の観光でほぼ間違いありません。居酒屋で注文したいメニューが写真で掲示されて、注文と同じものが出てきた時の喜びようは日本人では考えられないほどです。当たり前のことが彼らにはありえないことであり、感動になったのです。

● お土産はろう細工など細かい技の仕込まれたものが喜ばれます
 日本ツアーでお土産に彼らが買うのが、扇子などの日本古来工芸品などです。でも特に人気のあるものが、居酒屋などで見つけたろう細工の料理です。天ぷら、寿司、ピザ、パスタなどの芸術的なつくりになっており、彼らは羨望の眼差しで買い求めます。USBメモリーに寿司ネタをつけたりしますが、それも人気です。彼らが買い求める場面を見て、改めて日本人の指先手先の器用さによる工芸技術力に感心せざるを得ません。
 ヨーロッパ人は、工場内では何かと伝えるのに言語や文章を多用しています。それも「主語+動詞」で表します。誤解を招かないようにキチンとしていますが、読むのに面倒な欠点があります。イラストやマンガ、ポンチ絵などで表現するのが苦手です。しかも多国籍の人が多くいます。
 でもパッと見てすぐにわかり伝わるには、文字より写真やイラストの方が優れています。私も写真やイラストも多用してわかりやすく伝わる工夫をしています。キチンとしたものよりも、少し崩して描くと彼らはよく見てくれます。それは、人間味なのでしょうか。