新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第12回

ヨーロッパの人にできて日本人にできない分煙

● かつてはヘビースモーカーでしたが、あるきっかけで止めることができました
 かつて私はベビースモーカーでした。会社に入ってから設計をすることになり、図面とにらめっこをしているとイライラのせいかニコチンが必要になってきました。やがて隣の同僚と直径30cmの大皿の灰皿一杯が、1日で埋まるまで吸うようになりました。
 アイデアが出ないと、ついタバコに手が出てしまいます。タバコを吸うのではなくマッチ(当時はまだマッチが主流)で火をつけるという行為で、気分転換するルーティンだったと思います。当時はまだ分煙といった考えはなく多くの場所で喫煙でき、飛行機もほとんどが喫煙席でした。古き良き時代でした。ヨーロッパではタバコ1箱が約1000円もします。日本の約2倍ですが彼らもなかなかやめられないようです。
 タバコでは間に合わず、パイプも毎日吸っていました。自宅から会社には25kmあり、車では30分かかる距離でした。パイプに刻みタバコを詰めて吸うとちょうど30分でした。朝と夜の2回プカプカとくゆらせ通勤していました。時々会社で吸うと上司から文句を言われました。同じ煙を出すだけで問題ないでしょうと反論しましたが、最後は権力に伏せてしまいました。洗車は、普通外から洗うものですが、私の場合は室内から掃除をします。窓ガラスを吹き始めると、すぐ茶色になっていました。シートは穴だらけですから、誰も車に乗る人はいませんでした。
 タバコを止めようと思い禁煙に何度も挑戦をしましたが、最短は1時間でした。意志の弱さを思い切り認識できました。でもコンサルタントになって1年目に、あるきっかけで止められることができました。それは乱杭歯なので歯ブラシが届かず、歯についたニコチンが取れないので、相手にお歯黒状態の歯を見せることはとんでもない恥だと思ったからです。
 自分の立場が変わり、お客様相手の商売になったことで止めることができました。一番辛かったのは、たぶん通訳だったと思います。毎日一緒なので、彼らも一緒に吸っていたことに大いに反省させられました。不思議なことにそれ以来禁煙できていますし、逆にタバコが嫌いになりました。

● ヨーロッパでは分煙が確実に守られますが、日本はなぜできないのでしょうか
 ヨーロッパのレストランでは、今ではどこでも全面的に禁煙になっています。標準を守らないイタリアでも、現地の人だけでなく観光客も守っています。タバコを吸う人は、レストランの外で肩を寄せ合いながら吸っています。夏なると家にエアコンがないので、オープンスカイのレストランで食事をしたり、お酒を飲んで涼を取りながら紫煙を楽しんでいます。未だにドイツでは、企業も家庭もほとんどエアコンはありません。10数年ほど前に扇風機が良く売れるようになったほどです。エアコンの需要はブルーオーシャン状態です。
 冬のセントラルヒーティングは万全ですが、近年の猛暑や酷暑への対応はまだできていません。外は喫煙が認められていますので、冬でも寒いのを我慢しながら吸っている人もいます。アパートから見えるご近所さんの蛍族もたくさん垣間見られますが、風潮として室内でも禁煙という我慢をやることが当たり前になってきています。でもポイ捨ては少なくなりましたが、まだ多く見られます。
 大阪駅近くの喫茶店を探していたら、全面喫煙席の喫茶店がありました。大阪は何でも新しいことをやる人たちが多いようですが、時代の流れに逆らってというか喫煙ファンのために堂々と営業していたのでびっくりしました。飲み屋さんに行っても、喫煙が当たり前で禁煙者にとっては苦しく切ない環境になっています。
 ヨーロッパでは、障がい者用の駐車場が整備され、さらには女性専用の駐車場も設置されています。これらの駐車場に健常者や男性が駐車をすると捕まって罰金を払う羽目になります。この約束事はヨーロッパでは守られていますが、日本ではどうでしょうか?スーパーやコンビニでも一番近いところに表示されていますが、お構いなしに元気な若者やオバちゃんが堂々と駐車します。
 以前は見つけた時に注意をしていましたが、最近は切れる人が多くなり逆に仕返しをされる方が怖くなり避けています。正義や道徳が通らない昨今は寂しい気がします。
 島国根性?他責人間? 自己中?この違いは何でしょうか?災害のあった時やスポーツの後片付けにおいて規律は良く守られ世界中から称賛される国民ですが、タバコや駐車に関しては不思議な行動形態です。

● 多くの人たちが集まるからこそルールが守られる
 ヨーロッパの人たちは約5億人ですが、ロシアや中東などとも陸続きですから、10億ともいう人口や多くの民族も宗教も入り混じっている現実があります。そのために過去には権力争いや領土侵犯など戦争が頻繁に発生していました。ブレーキをかけるために決め事を守らないことには、また争いが勃発してしまいます。その自制心が心の底にあるかもしれません。
 ドイツでは会社が3年も赤字が続くと、会社としての責任がないということで国の方から潰されます。日本の企業は6~7割が赤字なのに会社は潰れませんが、誤魔化すことが巧みなのでしょう。また住めなくなった家をほったらかしにすると危険なので、強制的に壊されます。
 冬に道路が凍結したままにして、他人がケガをしたらその家の人が怒られます。家の窓ガラスが汚れていると隣の住民がきれいにしなさいと文句を言いますが、言い返す人はいません。横断歩道を歩いている人がいると、100%車は止まります。赤信号で突っ込む車もいません。素晴らしくルールを皆が守ります。色々な人がいるからこそ、ルールを守るべきとお互いが考えているからでしょうか。