虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第2回:空気は見えませんが、実は見えるんです(その2)

●人は自分が見えないし、自分がわからないものです

「あなたは、ご自分の背中や後頭部を見たことがありますか?」と訊ねると、「当然見たことがある。」と答えます。さらに問い質して、「ご自分の眼で直接ですか?」というと、「うーん、実は鏡だ!」と返事が返ってきます。鏡は左右対称に写っており、あくまでも虚像です。「直接見ることができますか?」とさらに問い詰めると、「それは、、、、?」と情けない返事が返ってきます。自分の背中や後頭部は、ろくろ首のお化けしか見えないのです。
さらに問い質して、「ご自分の眼の前の“まぶた”をみたことがありますか?」と訊ねると、皆さんが困った顔をされます。「実は起きている間でも、毎日約2万回も見ているはずですよ!」と投げかけます。「じぇ、じぇ、じぇ!」と驚きの声が返ってきます。起きている時間は約16時間、まぶたを開閉するまでの平均時間を約3秒とすると、16時間×60分×60秒÷3秒=19200回≒2万回になります。
 
余りにも間近にあると、何ごとでも見なくなるものです。皆さんの職場も一緒で、毎日見ているとムダも見えなってしまいます。普段は意識していないので見えないのですが、意識して他人のまぶたの開閉時間を観察してみてください。何も意識していないと、平均3秒です。いくらまぶたを閉じようとしなくても、せいぜい30秒が限界です。眼球が乾いてしまい、ついついまぶたを閉じてしまいます。
 
でも普段まぶたを3秒ごとに開閉しているのですが、余りにも眼の前にあるので見えなくなっているのです。女性は化粧をする時に片方のまぶたを閉じて、眼の周りの化粧をされます。片方の眼を閉じることでもう他方の眼の周囲を見るのです。これはものを客観的に見る一つのヒントです。
 

●色々な方法を知ることで、見える対象が拡がります

乗用車で駐車する時に自分の車の後ろだけでなく、360度全方向が見える画面が装備されたことを、売り文句にした車が発売されました。恐らく縦列やバック駐車の苦手な人がいたので、全方向が見渡せるカメラを装着したちょっとした工夫を商品化されたのです。
 
全方向が見渡せるカメラを装着したことで、駐車する際に今まで見えなかった部分が見えるようになり、空スペースを確実に確認しながら安心して運転ができるようにしたものです。これは顧客のニーズから商品化したものでしょう。さらにもっと突っ込んで問い詰めていくと、メーカーも顧客も気づかなかったシーズがあるはずです。一見見えないものですが、問い詰めていくと、ニーズからシーズも見えるはずです。そして気づかなかった画期的なアイデアも出るようになります。もっと深堀利してみましょう。
 
この操作を可能にしているのが、各種のセンサーです。障害物までの距離を感知するバックソナーは、ピエゾ素子を使って観測して警告音などで距離感を運転手に知らせます。これはセラミックを応用したもので、他にも色々なものを観測するために、光センサー、近接センサー、磁気センサーなどがあります。これも人の眼で見えなかったものを、モニターで見えるようにしたものです。
 
これらはいずれも今まで見えなかったものをどうしたら見えるようになるかを考え、試行錯誤しながら創り上げたものです。困ったことをとことん追求することで、欲しい形にすることができるのです。その原動力は、旺盛な好奇心と決して諦めなかったチャレンジ精神だと思います。
 
旅に出ることは多くの人の楽しみです。見知らぬ土地に出かけて行き、新しい出会いや道中のハプニングなどもあります。自宅に戻ってきて、「ああ、やっぱり自宅はいいなあ。」と思わずつぶやくことがあります。自分の立場を離れることや再び戻ることで、改めて双方の良さや悪さも見ることができます。積極的に自らの環境を変えてみましょう。

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