虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第30回:後ろ向きや過去は刺激や気づきの宝庫です(その2)

たまには後ろを振り返ってみてはどうでしょうか?

 コンビニは最近出店が飽和状態になっているようですが、全国に約5万店舗もあります。約30坪の敷地に約2500アイテムの商品が陳列されおり、大抵の必要なものは代替可能で入手できる本当に便利なエリアです。この商品のうち7割にあたる約2000点の商品は、1年間の内に入れ替わると言われています。この期間内に自然淘汰されて入れ替わるなかで、いつも変わらない商品もいくつか存在しています。
 味の素(1951年にふたに穴の開いた容器発売)、チキンラーメン(1958年発売)、サインペン、日清焼そば(1963年)、オロナミンC(1965年)、ポッキー(1966年)、カップヌードル(1971年)といった誰でもご存じの商品があります。さらにボンカレー(1968年)は、当初のモデルだった松山容子さんの写真がそのままに、現在も沖縄県では販売されていますが、発見した時はびっくりしました。
 いつもは目先のことしか見ないで、たまには未来のことを考えてみましょうと思考の転換を図るために、コンサルの現場で檄(げき)を飛ばすこともあります。でもたまには、後ろである過去を振り返ってみることも大切です。それは現在の位置を再確認でき、さらに未来を考えるきっかけをつくるからです。
 つまり過去にも眼を向けたり、歴史を振り返ってみたりする眼を持つことです。いわばトレンドを見ていく魚の眼です。これらの商品から、現在もなお多くの消費者に支持され続けているヒントや学びを発見できます。
 またその商品の誕生の経緯、開発当初の失敗事例、そしてそれらを見事に克服して乗り越えた数々の挑戦の記録などは、実話でもあり感動に溢れ勇気が湧いてきます。これらを知って商品を手に取った時に、そのストーリーに少しでも思い馳せてみると、グッと心が動くでしょう。

長寿命の商品は、気づきの良い事例です

 長年商品が愛され続けられているかに、時代の変化に対して商品の変化が確実にできる何かが読み取れます。変えてはいけない部分と変えても良い部分のコンセプトが、明確になっていると考えます。これを間違えると商品の寿命は尽きてしまいます。
 チキンラーメンの包装のデザインは、当初は中身が良く見えるように透明部分が多くありました。でも光が当たることを避けるため少しずつその面積は小さくしています。また卵を入れるためのクボミを設けたりして、時代の要求を商品に反映しています。
 化学調味料の味の素の中ブタにある穴は、数が少なかったのを少しずつ増やして消費量を増やしていきました。さらに口径を大きくしたり、「サッサッサッ」の3回の掛け声で、容器を確実に振らせるという歌までさりげなくしかも細かく考えられています。
 ボンカレーは世界最初のレトルトカレーですが、そのパウチの材料選定から材料の加熱方法のすべてが試行錯誤の連続であり、そこで諦めなかった精神は見習うべきものです。その実験に使った釜は、まだ健在で時々実験用にも使われているそうです。何もなかったからこそ何でもゼロから実験せざるを得なく、逆に誰もやったことのないノウハウを積み重ねることができ、市場の変化にも対応できる力も鍛えられたと考えます。
 そして消費者のニーズやさらには、見えないシーズまで掘り下げる力を養われたと想像します。そして時代の変化に対応できる商品の長寿命化にもつながっていると考えます。長い歴史のあるものからも、多くのヒントが隠されています。