からくりカイゼン 第22回

中国からのからくりカイゼン展への参加

 今回のからくりカイゼン展を見学したい中国人がいるので、レクチャーをして欲しいと日本の某貿易会社から連絡がありました。依頼された方は、以前何かでからくりカイゼンを説明する著者をご存じだったそうです。

 熱心に依頼されましたので、お引き受けをすることにしました。からくりカイゼン展が始まる2日前に、3時間のレクチャーを東京でさせていただくことになりました。

 欧州では18年間の通訳を介してのレクチャーをしていましたが、中国語は初めてでした。日本語と中国語のやり取りは、当然全くわかりません。ドイツ語に翻訳するのは、直訳はできないそうで意訳をしないと通じないと通訳は言います。

 また、日本語は主語を言わなくても、自分なのか相手なのかは文脈でわかります。でもドイツ語で話をする時には、主語はだれになるかで、全く違った言い方をするというのです。主語が私なら、動詞も定冠詞も全く違うものを使わないと通じないそうです。面倒くさいですが、それゆえに間違いが少ないやり取りができるというのです。

 経験上、日本語で1分話をすると、ドイツ語では1.5分かかるというのが普通です。でも中国語の翻訳の時間の長さは未知数でしたので、とても3時間講義ができる不安でした。

 通訳は、その会社の社長がやるということで、ぶっつけ本番でのレクチャーになりました。事前の打ち合わせもしたかったので、予定時間の45分前にお会いしました。日本語と中国語の翻訳のタイミングを確認しました。ほぼ1対1でしたが、全く違く言語だというのは理解できました。

 40歳代の社長さんは、日常は商談や会話は問題ないとのことでしたが、セミナーの通訳は10年ぶりとのことでした。著者も通訳を介してのセミナーは8年ぶりで、足元が震えそうでした。

 事前に42ページのテキストを中国語に翻訳されていましたが、全文見たことのない言語なので、これも戸惑うことになりました。時折りその意味は何ですか?話が飛んでいませんか?などと通訳からの逆質問などがあり、慌ててしまいました。

 普段、日本語だけで講義をしていると、通訳が話をしている間に何も考えることがなく思った通りに話せます。今回のように、通訳が訳している時に余計なことを考えてもっとわかりやすい事例はないかなどとい考えてしまう場面が何度もありました。

 8年もやっていないとリズムが掴めなくなくなりましたが、通訳の社長からタイミングよく手助けをしてもらい、何とかすべてつなぐことができました。

 それでも、予定の時間通りに進めることができました。その後の質疑応答は、熱心な質問が続きます。中国人は、質問が多く積極的と聞いていましたがその通りでした。次の移動時間ギリギリまで質問は続きました。

 あとから伺うと、講義も質疑応答も満足された対応ができたとのことで安堵しました。講義や質問でももっと自分のものにしたいという中国人の精神は、素晴らしいと思いました。日本人は、この精神をもっと持って欲しいと思いました。

 講義の途中に通訳から意外な話を聞かせてもらいました。中国は今も働いた分がもらえるという出来高給料制度になっているそうです。

 そのために彼らは一所懸命に働いており、一人の生産性はその人たちの頑張りで決まるので、中国人の生産性は高いそうです。出来高給料制度は、ドイツでも20数年前にも一部であり、著者も経験しました。

 もう一つの話題は、今中国は不景気になっており、今回のツアーなども多くのところでキャンセルが発生しているそうです。

 その後彼らのツアーは続き、某工場見学、そしてからくりカイゼン展にもお越しになったそうです。後日、来年もこのツアーを開催したいと連絡がありました。